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公害等調整委員会の広報誌「ちょうせい」第45号平成18年5月発行(資料1)をみますと、二人の専門家と称する人物を中心に、次のような発言が残されています。
音源駆動と苦情内容が一致しない者、或いは莫大な費用をかけて音源対策をしても苦情をやめない者、耳鳴りと低周波音域による耳鳴りと区別がつかない、などと苦情者の主張が感情的で非論理的だとの内容になっています。
幾つかピックアップしてみます。
1.    感覚閾値を下回る低周波音が健康被害の原因となることがあるかと、話題になった
2.    機械の稼動パターンと被害者の体感が対応しているか(落合)
3.    能力レベルの高い機関は、空気振動のみならず、室外機の電流使用量や風向・風力も同時測定する(塩田)
4.    低周波音が話題になると苦情が増える原因になる(塩田)
5.    従前の計測から25Hzが犯人と思いきや、計測してみると苦情者は25Hzに対応していなかった(落合)
6.    オランダの大学教授が「被害者が一人のみのケースは耳鳴りの可能性を検討すべき」としている(落合)
7.    NHK番組の中で「耳鳴りのメカニズム」が報道されて、まだまだ不明なことが多い、と感じたので、耳鼻科の医師の協力を得て、一緒に研究するとよい(落合)
8.    相手の言い分を全く聞かず、ただ相手を罵倒する苦情者・・・「騒音・低周波音対策は費用対効果の世界」・・・このくらいなら我慢できる音圧レベルを探る
9.    専門家に話を聞いてもらい、説明を受けることで、気が済む、我慢すべきレベルだと納得する
10.    縦割り行政の弊害を打破しうる、公調委の役割を期待する
しかしながら・・・


第一の陥穽:感覚閾値
 参照値に科学の裏付けが欠落していることは、2009.04.10内閣総理大臣麻生太郎様宛「低周波音暴露という犯罪の取り締まりについて」(資料2)で指摘した通り、骨導音の要素が意図して除外されています。それは「低周波音に係る聴感特性実験結果」を基にしたものですから虚偽です。現在迄「低周波音に係る聴感特性実験」が行われたことはありません。「低周波音に係る気導音による聴感特性実験」と表記せず、庶民を欺く表記になっています。
また、可聴域を一括りで扱うためのA特性値同様に、低周波音域を一括りで取り扱おうとする、G特性音圧レベルもまた感覚閾値を基に算出された虚偽の値です。
 最も重要な事柄を直隠すことは、騙しの常套手段ですから、[1]で見られるように、基準値紛いの架空の数値を掲揚して議論させることが、環境省の目的だとするなら、感覚閾値を弄ぶ公害等調整委員会も同罪ということになります。
 環境省発表『平成21年度移動発生源等の低周波音に関する検討調査等業務報告書(平成22年3月)』には、参照値なる言葉をもはや使用することができず「感覚閾値・聴覚閾値」を使用していますが、この言葉も参照値同様に骨導音の要素が抜け落ちた「マヤカシ」に過ぎず、医師が関与していない閾値実験に医学的識見が欠落していることは明白です。医師が監理したのであれば、聴覚の実験に骨導音の検査項目を遺漏することはありません。
 ISO226(MAF):「Minimum Audible Field、可聴音の感覚闇値」、低調波音の感覚闇値:犬飼らの報告(「心身に係る苦情に関する参照値」の基礎データ)、気になる―気にならない:〝中村他「低周波音に対する感覚と評価に関する基礎研究」昭和55年度文部省科学研究費「環境科学」特別研究〟による「音が気になる―気にならない(50%値)」の評価値、心身に係る苦情に関する参照値:環境省「低周波音問題対応の手引書」に示される「寄せられた苦情が低調波音に起因するものか否かを判断するための目安」など、全て低周波音被害を否定するために、〝聞こえ〟には鼓膜経由の気導音と鼓膜を経由しない骨導音があることを遺漏しています。

 

第二の陥穽:被害者の体感
 「低周波音問題対応の手引書」の「5.2 心身に係る苦情の場合(1)発生源の稼動状況と苦情内容の対応関係の把握」に「施設等を5分から10分程度の間隔で稼働・停止し、苦情者が施設等の稼働・停止を識別できたか、苦情の状況が変化したかを、苦情者が家の中で一番低周波音を感じる場所であると申し出る部屋において確認する。なお、低周波音の音圧レベルが小さい場合には、低周波音が聞き取り難い(感じにくい)こと・不快感は多少残ること・車の通過などの暗騒音によって識別が邪魔されることがあることから、稼働・停止の識別の時間として数秒程度のずれはあり得る」(資料3)と記述されていることが、[2]の発言の根拠です。
 船酔い状態の被害者が、許容範囲とされている数秒程度の誤差で、オトの動静を指摘することは不可能です。船から下りたとて船酔いは直ぐには治まりません。耳鳴りのような圧迫感や、心拍も血圧も亢進し息苦しさでフラフラしている状態で、酷いケースでは1分毎に自分の反応を記録させられます。実質的に計測中は筆記を取り続けることとなり、そして、「機械のオン・オフの稼動パターンと被害者の体感が対応していないことの証明」ができあがります。
被害者は、自己の被害を証明するためには、苦しさに耐えても低周波音曝露の空間に入らざるをえないと考える、しかしそれは仕組まれた罠であって、低周波音曝露という謂わば拷問を受けている最中に強要された自白に、証拠としての価値がないことは自明の理です。
 況して、それを国家機関自らが実施することなど、民主国家の根幹を揺るがす忌々しき大問題であり、そのような愚挙を避けるために、意見書なり診断書なり医師の判断を活かすという賢聖の知恵が求められるのです。

 

第三の陥穽:音源工作
 エコキュートのようにオトが殆ど聞こえない場合もあれば、工場や事業所での機器は、それなりに騒音や振動を発していて、音源側もそれを承知していることがあります。被害者が、行政窓口への苦情から一歩進んで、公害等調整委員会への裁定申請や調停、そして裁判へと闘いの意思を鮮明にするに従い、音源側も不安になって、第三者機関の調査を前に、音源対策を終える場合がよくあります。
 [5]のように、事前の計測では25Hzの卓越周波数が捕捉されているからこそ法律行為に及んでいても、業者が調査に入ったときに、空気振動が様変わりしていて、卓越する波動が見当たらなければ、申請人は窮境に立たされます。
当該の空気振動が低減すれば、被害が限定的或いは解消される可能性も生まれますが、それは同時に、非申請人の行為が事実無根の因縁である、国家の調査記録もあるぞと、名誉毀損で提訴される危険が生じることでもあります。言い換えれば、国家が或いは行政が、被害者を加害者に仕立て上げるためのお膳立てをしてくださるのです。
 当該の空気振動の変化は、機器の移設や修理、仕様変更、更には撤去されたこともその理由として考えなくてなりません。空気振動なる物理現象を、録音すらできない低周波音について、申請時と調査時に整合性が認められない理由を、申請人の心理的な問題にのみ責任を負わせる行為は、一方的に被申請人の利益を誘導する偏頗の極みです。公正中立であるべき委員会や官吏であることの職務をすっかり忘却しています。
 調査時のみの電流使用量計測では、被害を否定する被申請人を利することに他ならないし、被申請人が対策した機器の状況変化について、被申請人からの告知がないままに、被害を否定するのであれば、その行為は音源工作なる詐欺に他なりません。どういう訳か、昨年暮、公調委の現地調査で工場の冷却設備室外機の電流使用量を計測しなかった事例があり、技術力を有していない業者なのか、或いは電流使用量を計測する仕様を業者に伝えていなければ、[3]の認識を活かしていない公調委の責任が問われます。

 

第四の陥穽:疫学
 公衆衛生(学)は、集団の健康の分析に基づく地域全体の健康への脅威を扱うが、さまざまに定義され、多くの分野からなっていて、その典型的な区分の一つに疫学があります。
その疫学とは集団における健康と疾患に影響を与える要因に関する学問であり、国際疫学学会の定義は「特定の集団における健康に関連する状況あるいは事象の、分布あるいは規定因子に関する研究。また、健康問題を制御するために疫学を応用すること」(Wikipedia)です。
 また、疫学的研究では、集団における病気を持つ個体の数を測定することにより、流行状態を頻度(有病割合や発生率など)として数量化することでもあります。
 現在、JR中央線高架化工事での工事区間(三鷹~立川)13.1kmの低周波音苦情者は私一人のようですが、国立市では、20年以上前に複数の被害者の存在が知られていて、お一人は転居されたことが分かっています。平成22年4月1日現在74,329人の国立市民の内、私が承知している被害者数は自身を含めて5人です。一万人に一人以下の0.00672%の被害者が散在した状態を、統計的に疫学で扱うことは無理です。
 臨床医学が個人水準で健康を扱うのに対して、公衆衛生は社会水準で健康を取り扱うのですから、低周波音症候群のような、個人差が極めて顕著な被害を、疫学で扱うべきではありません。寧ろ、公衆衛生の専門家(資料4)が低周波音問題に関与しているのだと、「低周波空気振動被害を認めないために、医学的知見を排除している」との指弾を回避するための策として利用されているに過ぎません。騒音や振動とは異なり、所謂「公害として、相当範囲に影響がある」そのように表現できないのが低周波空気振動被害です。
 [6]のような発言は、低周波音症候群被害に対する、よくある偏見です。一家に低周波音症候群被害者が複数人居ることも稀なら、お隣に同じ被害者がいる事例は、かつての自動車道路に起因する被害以外には聞いたことがありません。自分の周辺に被害者が複数居るのであれば、被害者がこんなに孤立することはありません。騒音やガタツキなら大方のヒトに理解されますから直ぐに対策されて、疾患であると言い得る被害にはなりません。

 

第五の陥穽:FFT
 FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)とは、DFT (Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換) を計算機上で高速に計算する算法(アルゴリズム)のことです。その意味するところは、数学や物理学を学んでいなければ理解はできません。つまり、我々庶民には分からないということですが、請売りすれば、FFT解析によって、ブレンドされたウイスキーの原酒成分比を算出することが可能ということです。
 地盤振動でも空気振動でも距離や構造物によってエネルギーは減衰して、音源から被害地へと到達します。一度放たれた空気振動エネルギーは距離減衰を伴いながら放射状に拡散し、構造物によって反射、回折、共鳴など変化を伴った結果、例えば被害者宅に到達します。特に波長の長い超低域の空気振動は、大抵の構造物をその波長の中に飲み込み、平均的な大きさの日本家屋を揺さ振りながら伝播する一方、騒音は一枚の壁やドアで遮蔽することが可能で、喧しさ騒がしさは密閉することで静かになります。
 「ピーク周波数を音源側と受音側で比較して、周波数が一致しているかどうかで音の伝搬状況をつかむ」とは、元のウイスキー(音源側)と、伝播の結果、様々に変化して被害者宅にある、謂わば水で希釈したウイスキー(受音側)を、成分比を基に同一のものかどうか判断することですから、所詮はヒトの判読次第であり恣意的に判断可能ということです。
 カクテルパーティ効果(注記1)として知られる、様々な音圧レベルの複数の入力音の存在する状況下において、より低い音圧レベルの音源を、より鮮明に認知可能であるヒトの感覚を、FFT解析結果を持って否定することには無理があります。音源からの被害現場へのエネルギー到達を証明することは可能であってもです。
如何に高価なグッチやフェラガモの靴であれ、使い古したボロ靴であれ、たった一粒の砂が、履き心地から快適さを奪ってしまいます。また、どのような環境に置かれても、我が子の微かな叫びを聞き逃す母親は居ません。それがヒトであれ動物であれ、生きているのであれば、愛情や苦しさの対象からは格別の意味・情報を受け取ります。

 

第六の陥穽:震度ゼロ
 低周波音症候群被害は最低でも3週間、場合に依っては数年間の曝露期間を経て発症します。鼓膜が無い方、内耳に損傷がある方が即発した例はありますが、人工的な空気振動による長時間・長期間の低周波音曝露を受けた結果の被害です。その被害を否定するためか、計測時間が僅かに数時間であったり、その評価を数分、場合によっては30秒等とされることがあり、その評価対象時間が短時間であることに加え、抽出条件が明白でないこともあります。
症状は主として不定愁訴、原因は物理現象と、なんとも掌握し難いこの被害を否定するのであれば、3日や一週間位は計測させたらどうですか、それができないなら「計測できます」とは言わず、「計測可能な技術を保有していません」、「低周波音被害を否定できません」と言うべきです。
 所謂「振動」に関する考え方は振動規制法(資料5)で定義されていて、地震震度0が地盤振動閾値55dBとされ、慢性的な疾患である低周波空気振動被害と対のように発生する地盤振動被害を否定する根拠として利用されています。
短時間の実験や計測を基にして、低周波空気振動被害のような慢性疾患を否定する判断材料にならないことは論を俟ちませんが、ときに、無感地震を引き合いにして、低周波空気振動被害を否定されることがありますが、地震はグラグラッとガタツイて終わる自然現象ですから、無感地震に限らず被害はありません。
 尚、低温熱傷(注記2)は極端に熱源の接触時間が長いため、発赤や水疱形成だけに見えても深部に深い損傷を負っていることが多く重症になりやすいことが知られていますが、低周波空気振動被害からは、疾患には急性・慢性で大きな違いがあることなど、医学的知見が排除されていることが分かります。

 

第七の陥穽:法律家
 環境省が前門の虎として、感覚閾値や参照値を持って低周波音被害者潰しに立ちはだかるなら、公害等調整委員会は後門の狼として低周波音被害を揉み消してきました。その典型が、「公調委平成13年(セ)第2号 横浜市における振動・低周波音被害責任裁定申請事件」平成15年3月31日、公害等調整委員会裁定委員会裁定委員長加藤和夫他、平石次郎、平野治生の裁定です。
 公害等調整委員会は架空の基準としての感覚閾値を採用し、他の誰も苦情していないとして個人差が極めて顕著である被害を否認、加えて他国に例が無いとして棄却しました。しかし、既に感覚閾値の化けの皮は剥がれ落ち、他国にも我が国より遥かに多い被害者の存在が明らかになっていても低周波音被害を学習しようとはしていません。
判例時報一九九一号・一九九二号「騒音・低周波音被害をめぐる受忍限度・因果関係に関する一考察」河村浩 公害等調整委員会事務局審査官、森田淳 公害等調整委員会事務局審査官補佐、の通りです。これについて汐見文隆医師による反論、月間むすぶ№454「低周波音被害は誰の犯罪か、被害者はいつ救済されるのか、法曹の迷妄を問う」(資料6)を添付します。
 公共事業に因縁をつけた金目当ての一家としての謗りを甘受し、病弱の母とその母を支える子息の二人家族は、我が家を奪われたまま、ひっそりと暮らしています。横浜市によって低周波音曝露という暴行を受け、糅てて加えて国家からも被害を否定された結果、横紙を破る家族であるとの汚名を着せられたまま蹲っています。
横浜地下鉄被害者にとって、上辺は公平公正を装いながら、内実は凶悪無慈悲である公害等調整委員会は、正に狼に衣であり、紛れもない国家による犯罪の実行者です。
 また、この裁定が、低周波音問題に生業を求める工学氏達を増長させました。低周波音に関しては、望むだけの嘘を吐いてもお咎めはないと、国家が周知したのですから、味を占めた工学氏達が、我が物顔で〝専門家〟と公言して憚らなくなりました。

 

第八の陥穽:専門家
 低周波音被害の専門家とは、ヒトの健康被害に関してのことですから、医師以外には専門家はありませんし、この被害を否定する医師は一人もおいでになりませんが、低周波音被害を理解されている医師は汐見文隆氏だけで、医師であっても「耳鳴りや頭鳴りは完治しにくい」のですから工学士に解明できる筈がありません。『April 26, 2010報道に於ける「低周波空気振動の人体影響」について』(資料7)を添付します。
 [4]の如きは、本来的に低周波音被害が話題になって苦情が増加するのは当然です。30年以上前から多数存在していた被害を、「被害ではなく、低周波音苦情者は非健常者、狂疾だ」と隠し続けてきたのが社団法人日本騒音制御工学会や独立行政法人産業技術総合研究所に巣食う工学士です。今、覆いのカバーが外れかけて、真実の被害の実態が見えつつある状態ですから、被害者の数が増大するは必定です。
 そもそも、エコキュート等の低周波音加害源たる機器が増加したのは、表面上の騒音を低下すれば販売しやすい、その反面で低周波音はどれだけ増加しても構わない、規制はないし、法令は作らない、と似非エコロジーによる静音化が普及したことが主因です。企業は相応の社会貢献と抱き合わせで、営利を目的に活動することが認められますから、営利を目的とする企業がエコキュートなどを販売することによって営利拡大を追及することは至極当然のことです。
 その意味で、製造販売企業が負うべき低周波音問題の罪は軽微であって、低周波音被害の過酷さを承知しながら、低周波音源に関する注意勧告をせず、被害が出れば国費でもってお仕事を手当てされる工学士達の責任がより重く、その工学士を重用してこの被害を拡大した公調委や環境省こそが、全ての責任を負うべきです
環境負荷を極小にできる発電用大型風車が、極めて短期間で開発された実例を考えれば、被害の存在を隠さずに告知さえしていれば、被害の拡大は防止できたのです。
 行政窓口など、あちこちに相談されて、なお埒が明かない被害者が、当会に助けを求めて見えますが、[9]の如く「我慢すべきレベルだと納得する被害者」は居ないし、そもそも[8]の如く「我慢できる音圧レベル」などないのが被害者です。そんな程度なら公害等調整委員会に裁定を申し立てることなどありはしません。騒音やガタツキとは異なり、被害状況が改善されずに過敏化し重症化するのですから、我慢できる音圧レベルなど無いのが、低周波空気振動被害です。
 公害等調整委員会のHPに於いて、低周波音被害者は我慢が足りないのだとする意見を掲示することは、物言えぬ低周波音被害者に対しての、「非論理的、情緒的で精神的にも狂妄である」といった、著しく偏った固定的な観念を国民一般に先入観として与えることであり、庶民との乖離を助長して被害者を孤立させ、問題の解決を一層困難にする許し難い行為です。
 工学士のリーダー達が、政府に阿諛して基準値紛いの架空の数値をつくり、これを利用して稼ぎに精出すコンサルタントや測定業者に続いて、疾患に対する医師の意見を否定して、低周波音問題を掻き回そうとする工学士も現れています。『April 26, 2010報道に於ける「低周波空気振動の人体影響」について』(前記、資料7)の如くです。
低周波空気振動被害について、工学士が専門家であるという嘘、環境問題であるという嘘、そして環境省の所掌であるとする嘘が、国家によって公認されています。

 

被害の原点:医師の排除
 ヒトの健康被害について最も重要なことはその被害が解消されることですが、低周波空気振動や電磁波や化学物質に起因する被害は、外因である原因を除棄できれば被害は消失します。多種多様な条件下で被害が発生しますから、外因を取り除く方法も、我が家を捨てるか、我が命を絶つか、振動源を破壊するか、なおまた交渉すれば誰にでも可能なこともあります。しかしその被害を疾患であると公称できるのは医師のみです。それが故に、工学士や官吏が挙って医師の識慮を排除してきました。工学士が低周波音問題を所掌すれば、医師ではないのですから必ず[6]、[7]の問題が付き纏うことは必至です。
 例えば物理現象の調査についても、低周波音被害については、社団法人日本騒音制御工学会や独立行政法人産業技術総合研究所とは無関係であることを条件に、多数ある優秀な大学の工学部などに依頼すべきです。また、警察が事前に立ち入り調査をした上で、全ての機器を把握することが場合によっては不可欠であり、どうしても被害者の体感が必要ならば、医師の立会いの下に体感調査をすべきです。
 縦割り行政の弊害を打破しうる、公調委の役割を期待する[10]などとは、現実を無視する頓馬が発する、途方も無い嘘です。工学氏らの手によって周到に準備された多数の陥穽は、公調委によってオーソライズされ、被害者にとっては幾重にも重なる決して取り外せない枷として機能しています。
 公害等調整委員会は、低周波音に関連する裁定事案の専門委員及びその選定理由を開示していません。情報公開請求の手続きをすれば返答するとのことでしたが、繰り返し工学士のみを専門委員にしたり社団法人日本騒音制御工学会と親密な業者に計測させたりしていますから、開示される内容は知れたことです。
 繰り返しになりますが、低周波空気振動曝露の特殊性を考えて、一刻も早く「低周波音曝露対策推進会議」を内閣府に設け、各省を総動員して、この問題の解決に臨むべきです。


 2010.5.7


注記1:カクテルパーティ効果 (Cocktail party effect)
 我々の日常生活において、耳には様々な音が混じり合って届いています。聴覚系は,その中から適切な要素を取り出してまとめ,音源に対応させていて、この働きが「聴覚の情景分析」と呼ばれています。例えばカクテルパーティ効果が生じるような状況において、耳には何十人もの人の声が入ってきます。その中から特定の人の声を聞き取ることができるのは何故、オーケストラの音の中から特定の楽器の音を聞き分けることができるのは何故か、このような問いに答えようとするのが「聴覚の情景分析」(Bregmanが1990年に提案した心理学上の概念)であるとされています。
 カクテルパーティ効果とは、様々な音圧レベルの複数の入力音の存在する状況下において、より低い音圧レベルの音源を、より鮮明に認知することを可能にする聴覚効果で、1953年に心理学者のチェリー(cherry)によって提唱された、人間の聴覚の特徴だと知られています。大勢の人が雑談している、カクテルパーティのような雑踏の中でも、自己にとって興味のあるヒトの会話、自分の名前などは、自然と聞き取る事ができることを指しています。

 

注記2:低温熱傷(Wikipedia)
 温熱熱傷の1つ。低温熱源による熱傷。長時間の低温熱源の直接接触により受傷する。接触部の温度が44℃だと約6~10時間で受傷する。また44~51℃までのあいだは接触する温度が高くなるにつれて受傷する時間が短縮される場合もある。低温熱源とは湯たんぽ、懐炉、ストーブ、ホットカーペットなどおもに暖房器具。受傷者側の要因としては、熟睡していたり体が不自由であったり、知覚麻痺、泥酔、一酸化炭素中毒、糖尿病による循環不良、などの状態にあると受傷しやすい。
 近年ではノートパソコンの使用に伴い、ひざに乗せることで本体底面部からの放熱でひざが、またキーボードやパームレスト部からの放熱で手のひらが、低温熱傷にかかる報告がある。
熱傷とは、お湯や油などの熱・化学薬品・放射線などが原因で生じる体表組織(主に皮膚)の局所的損傷。通称は火傷(やけど)。

 

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