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低周波音被害

 

一.加害者
 「公害は犯罪である」といわれるが、低周波空気振動曝露による被害は音源の停止時には被害は無く、駆動時に被害が生じる暴行であり、LED電球の直下では静電気に感電した時のようにビリビリする電磁波被害と同じであって、水俣病やイタイイタイ病、四日市喘息のような対応関係の判定が難しい面がある公害事件とは異なり、因果関係が明白な刑事事件である。
 その被害症状は治癒しない。死ぬ迄治らない。主たる曝露環境である自宅を離脱すれば症状は軽減するが、曝露環境に再び入れば被害者は必ず苦しむことになり、これまで何の反応もなかった家庭用冷暖房機器、パッカー車、バキュームカー、工事用重機や近所での車両アイドリングなど、冷蔵庫に至るまで身近にある多種多様な人工音に生涯呻吟する。
低域の空気振動は「空気による強力な打撃」となり、繊細な器官である中耳及び内耳を毀損するからだ。鼓膜は緩み、耳痛・耳閉塞を起こして「聞こえ」を劣化させるだけでなく、骨半規管(三半規管)や球形嚢、卵形嚢に過剰な圧力を加え、「平衡感覚」を狂わせて、真っ直ぐ歩けなくなり、ふら付いて転倒し時には骨折する。
然るに、暮しも生命も奪ってしまう低周波音被害の深刻さは、被害は無いとする環境計量事業者の手に依って隠されているだけでなく、被害を作ってきた加害の専門家を被害の専門家扱いするマスメディアや、国家御用達の衛生工学・社会工学士に加えて、社会的影響力が大きい日本消費者連盟や日本弁護士連合会などの大組織が同調して国家の下策は磨かれてきた。
 環境ジャーナリストや日消連、日弁連は加害者責任を追及しないどころか、今後も利益誘導すると宣言して、環境コンサルタント業を営む理工学士等の利権であった物理現象把握事業は愈々拡大し、被害の実態と共に加害空気振動(物理現象)も秘匿され続けて、公害等調整委員会や消費者安全調査委員会、末端行政に於いても、官吏や医師のみならず被害者にさえ、被害判断が可能な低周波空気振動は開示されないままである。
 〝聞こえ〟とは無関係の便宜的取り決めである筈の〝超低周波音〟は、低域の「聞こえない音」同然に利用され、〝超低周波音〟を調査し対策するのは特殊な技術を要するから、高額の費用が支払われて当然である、音源側との交渉にも高度の知識が求められるので、音響コンサルタントや弁護士には多額の支払いが必要だ、などと被害者は鼻面を引き回されてきた。
 一方、国家は40年来の幹線道路や重機が起因する被害を所掌する、国土交通省関連で多数の被害者が我も我もと陸続することを恐れて、被害を否定し隠蔽した結果、家庭用給湯器や巨大風車のような、視認可能な加害源からの被害が国内外でも知られるようになり、多数の被害者を否定できなくなった今、消費者庁で新たな遷延策を打ち出した。
①国家の秕政を事故と認める者のみを対策する
②被害者数が多数となり、疫学を適用可能な加害源のみを対策する
という。
 国家の使命を帯びた政府お抱えの学者達が、これまでの低周波音被害問題に主に関与した理工学関係者を批判する一方、医師や被害者の意見を無視しておいて、一部の被害者だけを救ってやろうというのだが、この学者等の虚言が基で作られた国家犯罪の責任を、自身には問わず他者に転嫁しつつ、多数派ではない音源からの被害者は救済しないのだ。
 追い詰められた学者の中には、特段に悪質な者がいて、被害者も社会も医師の意見を求めていることに抵抗して、「低周波音調査は音響コンサルタントの業務である、被害のメカニズムは前庭が関係している」「被害は聞こえを評価するためのA特性では正しい判断ができない、工学士の主張する低周波音の前庭影響には医学的根拠がある」などと言い募り、被害の専門家としての所掌を医師に奪われないようにと画策する。
 加害者側が「疫学で対応すべき」と、以前から主張しているのには明白な理由がある。疫学では、被害者救済可能な結論を得るための条件整備に時間がかかり、被害者を直ぐには救済できないからだ。
 現実に消費者庁消費者安全課事故調査室では、風車被害ですら日本では数が揃わないとの理由で調査対象にはせず、家庭用給湯器のみを対象にしてきた。無論、低周波音被害は事故ではなく国家犯罪であると、当会と共に抗議する被害者は救済対象にならない。
 また、エコキュートや家庭用冷暖房機器等の加害機器が視認できて、比較的低コストで対応できるものは、被害の深刻ささえ伝わっていれば、話し合いで被害解消されてきたにも拘わらず、工学士が被害を解消した、弁護士が被害者を救ったなどと虚言する者がおり、理工学士や弁護士がありつくパイ拡大に向けて公害被害者である犯罪被害者の声を封じ、新たな被害者にとっては、医師の意見は得られないまま、費用ばかりが嵩んで、被害解消には至らない最悪の結果に陥っている。
 問うまでもないのだが、低周波音被害に於ける全ての責任の所在は、国家及び社団法人日本騒音制御工学会に属する理工学関係者、国家御用達の学者達や、彼等を被害の専門家扱いする虚言者とその組織にあるのであり、被害者や医師には落ち度や担うべき責任は繊毫もない。
 そもそも、刑事犯罪を疫学で対応することは、古今東西未来永劫有り得ないことであって、加害者が用意した土俵である罠に自ら這い上がろうとする被害者はいないし、「被害者の救済」を口にするのであれば、その前に為すべきことがある。国家意思に取り込まれた者等は、NHKのTVカメラの前で拝跪し、被害者に謝罪すべきであり、一刻も早く全ての加害源の駆動停止を求めるべきだ。
 医師は、公害に限らず「疾患に於ける基準は切り捨てにしかならない」と考えてきたのであって、公害被害者を診続けその救済に東奔西走して生涯を閉じた原田正純氏や汐見文隆氏は、公害については「基準は被害者にあり」と述べられ、「被害の有無は被害者の判定に従う他はない」と意見されてきた。
 一例を挙げれば、水俣病の権威であられる原田正純氏は〝カネミ油症の第二世代〟について次のように述べて、国家及び社会を批判している。
 「実態把握の遅れが、救済の妨げになっている。被害を訴えても認定されない次世代が数多く居る。分かっていることは、氷山の一角だ。黒い赤ちゃんが生まれた事実、これだけしか分かっていない。本当に黒いだけだったのか? 病気というのは必ず、目で見て分かるような〝黒い子〟というのは氷山の一角だ。認定された母親から生まれた全ての次世代を調査すべき。油症患者であることの社会的、精神的、経済的差別がある。被害者に落ち度はない。立法府や行政府のそもそもの姿勢が間違いなのだ。水俣病も原爆被爆もそうだった。被害者の救済ではなくて償いをすべき、困っているから助けてやろうなんてとんでもない、彼等の責任だ。」
 被害実態からかけ離れた不正義の声だけが罷り通れば、被害防止や被害者救済に手が付けられることはなく、愛媛県伊方町の風車被害者がテレビカメラの前で、〝この地は地獄になった、なんとかして欲しい〟と訴えて既に十年を過ぎた今春、和歌山県由良町や高知県大月町での新たな風車被害者の死も報告され、被害者は一層の苦境に追い込まれている。
 


二.疫学
 環境省は平成23年3月、社団法人日本騒音制御工学会による「平成22年度移動発生源の低周波音等関する検討調査業務」を報告して、その中で、「低周波音による健康影響を評価する場合の疫学調査の考え方」を示している。次はその抜粋である。
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風力発電所から発生した騒音等に対する苦情が数多く生じている中で、両者の因果関係が明確になっているとは必ずしも言えない状況にある。この因果関係を明確にする方法として、物理的計測や主にアンケートによる社会調査など、幾つかのアプローチが実施されているが、疫学的な調査手法もその中の一つとして考えられる。本節では、一般的な状況下で低周波音に曝露された場合の健康影響の評価における疫学調査の考え方について述べ、これを風力発電所から発せられた低周波音に適用する場合の調査手順(あるいは方法)について考察する。低周波音曝露による健康影響を評価することは次のような理由から非常に困難である。
(3)疫学調査の考え方
低周波音曝露が健康影響を生ずるかどうかを疫学研究で検討するためには、低周波音に曝露する集団(曝露群)は、曝露しない集団(非曝露群)に比べ、何らかの健康影響が、曝露後により多く発現するか否かを調べる必要がある。この検討を意義あるものにするためには「バイアス」と呼ばれる「真実をねじ曲げる要因」をできるだけ排除する工夫をしなければならない。即ち、曝露群と非曝露群は集団としての特性が同一であり、曝露の有無以外は健康影響発現に関わる因子一切が同じでなければならない。
 これまでの知見によれば、低周波音曝露による健康影響が出やすい人の特徴として、
①精神的疾患を有する人あるいは精神疾患の気質を有する人
②その他の身体疾患を有する人
③強いストレスを受けている人
 風力発電所に関わらず、低周波音と健康影響との因果関係を推論するために疫学研究を実施することは概して困難であると思われるが、上記した物理的計測や主にアンケートによる社会調査などで得られる結果と相補的に利用できる可能性はあり、今後の検討課題になり得ると思われる。さらに関連して、風力発電所から発せられる騒音等に曝露されることに対するリスク評価手法の活用も考えられ、今後の研究の進展が望まれる。
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 ここで、低周波音曝露による健康影響が出やすい人の第一の特徴に「精神的疾患を有する人あるいは精神疾患の気質を有する人」と挙げられているが、本調査で設置された「移動発生源の低周波音等に関する検討調査委員会」の医学系委員は佐藤敏彦氏「北里大学医学部附属臨床研究センター医学(公衆衛生)」のみである。
 しかし、これまでの低周波音被害者に、「精神的疾患を有する人あるいは精神疾患の気質を有する人」が万一存在したとしても、国民がこれを確認することは不可能だ。なぜなら、そんな人物は何処の誰かと情報公開請求しても個人情報は開示できないし、低周波音被害の権威である汐見文隆医師は、被害者に精神的な偏りは認められない、と繰り返されていた。
 低周波音についてWeb上で流布している論文に、清水亮東京大学准教授指導の「低周波音被害の社会問題化」前川真帆香2009年度修士論文がある。巨大三枚翼風車とエコキュートに絞っての言説で、死に至る過酷な被害の専門家が医師ではなく音響コンサルタントとする、法治国家にあるまじき内容は社会通念に反したものである。
 低周波音被害者は40年来、誰にも聞こえない音や感じない振動を苦情する虚言者として、行政窓口である環境部門を中心に侮蔑の対象となってきたのだが、被害者が、深刻な健康被害の専門家が医師ではなく理工学士だと虚言する者、自己都合ばかりを主張する身勝手な社会の厄介者だとスタンプされるに至る理由の一つとなっているのがこの論文である。
これまでの低周波音被害の殆どの加害源は、工場や商業施設の建屋内にあったり、幹線道路や病院では多数の機器装置があって、音源特定し難いという構造があり、音源を視認し特定できれば被害解消への道程は半ばを超える。巨大三枚翼風車や家庭用給湯器が対象の調査ならば、いとも簡単に音源減弱操作の憂き目に遭って、音源駆動との対応関係認められないままに虚言者とされることもない。
 そればかりか、前川氏は、「低周波音症候群被害者の会」が主催する2008年9月28日第7回及び、2008年12月14日第8回の「低周波音症候群被害事例研究会」に参加して、「主催者は被害者ではなく、会は汐見氏の会だ」と、次の通り虚偽記載している。東京大学なる権威を利用した威力に依って、被害者の活動を妨害するという犯罪を正当化する悪質な論文は、査読の対象にしないことは元より、論文も修士資格も取り消すべきである。
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 筆者が把握している中で、発生源を特定せず低周波音問題として総合的に相談に乗っている非営利組織は、「騒音SOS」の他に「低周波音症候群被害者の会」と「低周波音問題研究会」がある。前者は医師である汐見文隆が低周波音の講演及び音測定を行っていた会であり、今は汐見医師から音測定などの指導を受けた人が臨時代表となっている。後者は、環境問題を扱っていた「"地球に未来を"武相の会」が低周波音問題を研究会で扱ったことを機に「低周波音問題研究会」として、勉強会の開催、被害者の講演などの活動を行い始めた。なお、ここの会長を務めているのは東京電機大学の石塚正英教授である。
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 当会(低周波空気振動被害者の会)の前身である「低周波音症候群被害者の会」は設立の経緯を「2006年12月28日、純粋に低周波音被害者の為の団体を設立し、被害者の現状を社会に正確に伝え、低周波音被害者の権利の確立、及び低周波音の減少・被害の撲滅を目指して、国や社会に働きかけていこうと決意したのがこの会の始まりです。」とHPにも明示しているのだが、前川氏は四時間にも及ぶ研究会に二度参加したにも拘わらず、臨時代表には一言もインタビューをせず、被害者の活動を正当に評価する意思は最初から無かったのだ。
 「低周波音被害調査は被害者にとっては困難なことだ、医師や大学教員でなければ」と差別意識を隠すことなく振る舞っていた修士には責任を問えなくとも、被害者蔑視を使嗾した指導教官である清水亮准教授には、「カナダ水俣病のインディアン居留地を訪れたことで"公害がおこったから差別がおこった"のではなく"差別のあるところに公害がおこる"ことを教えられた」という「原田正純氏の教訓」を教えて遣らねばなるまい。
 尚、ここに記述した主な事柄は、2014年1月8日消費者庁に招かれ低周波音被害問題について意見を求められ、複数の消費者庁の職員から「低周波音被害について意見をくださる医師はいませんか」と尋ねられた際、面前に居た清水亮准教授当人に文書を添えて伝えてある。
 東京大学の学生が和歌山県由良町で調査したことも伝えられているが、自分達が作った被害地に乗り込んで調査し論文を拵えても、被害者の救済活動はしない。
 それどころか、東京大学は計画的に低周波音被害問題を捻じ曲げ、新たな被害者を作ると同時に、被害者の救済を極めて困難にした事実からも、自ら求めて社会問題を拡大する犯罪組織と化している。
 


三.消費者庁
 低周波音加害者が待望していた、国政レベルでの「低周波音苦情と音源との因果関係は認められない」とする意見を、平成26年12月19日消費者安全調査委員会(事故調)委員長は「消安委第103号」で予定通り発表した。事故調はエコキュート苦情の〝調査をした〟とし、低周波音問題対応の窓口である、消費者庁長官、公害等調整委員会委員長、経済産業大臣、環境大臣へとその対応を求めた。
 意見は「低周波音固有の人体への影響の有無及びそのメカニズムには不明な点もあるため、現時点においては、ヒートポンプ給湯機の運転音による不眠等の健康症状の発生を根本的に防ぐ対策を示すことは困難であるが、健康症状発生のリスクをできるだけ低減するとともに、より根本的な再発防止策の検討と発症時の対応の改善を進めるため、経済産業省、環境省、消費者庁及び公害等調整委員会は以下の取組を行うべきである。」である。
 これを受けた、環境省水・大気環境局大気生活環境室は直ちに、平成26年12月26日付「事務連絡 低周波音問題対応の手引書における参照値の取扱の再周知について」を都道府県・市・特別区環境主管部(局)騒音振動担当官へ通知し「これまでと変わりなく誠実に苦情対応する」と回答し、加えて「平成28年1月 家庭用ヒートポンプ給湯機に関する 消費者安全調査委員会からの意見に対する対応について」に於いても「低周波音被害に関する新たな知見は得られていないので、対応には変化はない」と回答している。
 

その全文である。
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「家庭用ヒートポンプ給湯機の運転から生じる運転音・振動により不眠等の健康上の症状が発生したとされる事案に関して、消費者安全調査委員会が行った評価の結果が平成26年12月19日に公表され、同日付で同委員会委員長から環境大臣等に対して、消費者安全法第33条の規定に基づき、評価の結果を踏まえた意見が提出されました。
環境省への意見
2件についての対応状況は下記のとおりです。
(1)低周波音の人体への影響に関する研究の促進(意見(1)④)
環境省では、昭和50年代前半より低周波音の人体への影響についての研究を行っております。現時点においては、低周波音の人体への影響について、明らかな関連を示す知見は国内外ともにないと承知していますが、消費者安全調査委員会からの意見(1)④も踏まえ、引き続き、低周波音の人への影響等について最新の科学的知見の収集に努めてまいります。
(2)測定値が参照値以下であっても慎重な判断を要する旨の周知(意見(2)⑦)
消費者安全調査委員会からの意見(2)⑦を踏まえ、現場での音の測定値が参照値以下であっても慎重な判断を要する場合があることを一層明確に示すため、環境省では、平成26年12月26日付け事務連絡により、各都道府県、市・特別区の環境主管部(局)騒音振動担当官に対し、低周波音問題対応の手引書における参照値の取扱の再周知を行いました。また、地方公共団体の環境主管部局を対象とした「低周波音測定評価方法講習会」において、参照値以下であっても慎重な判断を要する場合があることについて詳細に説明しており、平成27年度に開催している講習会(平成27年12月から平成28年1月にかけ6回開催)においても、その旨周知しているところです。
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 これを見て「被害救済の新たな糸口が得られた」と受け止める被害者が存在するとは考えられないが、現実は更に酷いことになっている。
 毎日新聞の江口記者が記者会見で「低周波と科学的な健康問題の関係は、因果関係はよく分からないとされているが、関与していると考えられるとか可能性は否定できないとか、割と歯切れが悪いので、その辺の説明をして欲しい」と質問したところ、持丸委員長代理が「調査は、訴えられている隣家の方の協力が必ず得られるかどうか難しい面があり、ppmオーダーでは充分な実験ができない」と答え、畑村委員長は「ppmだったら100万件あったうちの1件がある」、持丸委員長代理「1件とかです」と加えて、調査には不備があると答えている。
「400万件(のエコキュートが)あったら、4件(の被害)ある」というのだが、平成26年12月19日発表の本文には、「隣家に設置されたヒートポンプ給湯機の運転音・振動により不眠等の健康症状が発生した。といった趣旨の相談情報が112件登録されている」とあり、2014年11月迄のエコキュート出荷台数は4,461,982台だから、事故調が認める被害は大目に見て5例となり、112件中107件には被害はないとの調査結果である。言い換えれば、エコキュート苦情の95%は虚言だったとの結論である。
 更に、共同通信の橋本記者が「現在の医学の科学研究では低周波音の人体への影響はどの程度解明されたと言えるのですか」と質問すると、持丸委員長代理は「正確に言うと、2つあり、メカニズムは分からないが、こうようなことが起きることがあり、人間の感覚系で受容されて、生体内の変化で起きるという中もよく分かるが、後者はほとんど解明されていないというのが実態です」と答えて、何が何だかサッパリ分からない。
 その後もグズグズと応答が続いて、橋本記者が「〝時間的な関連が認められた〟との表現があるが、状況証拠はあっても、この調査では因果関係を断言するには不十分という理解でよいか」と念を押すと、持丸委員長代理は「専門的になるが、ある時間的な対応で、どうも相関関係というのですが、これが起きているとこれも起きて、科学的なことですけれども、因果関係までははっきり言えないという慎重な言い回しにしてあります」と答えている。
ここまでくると言語明瞭意味不明で、何が専門的で何が科学的か庶民にはチンプンカンプンという他はないのだが、低周波音被害という、国家が遂行中の〝死に至る暴行傷害事案〟について、国家に選任された者等にしては、いや選ばれし者達だからこそなのだろう、余りにも無責任と言わざるを得ない。
 明白なことは、国家レベルで次の二点が結論されたことであり、エコキュート被害者もエコキュート以外の低周波音被害者も、これまで以上の窮地に置かれてしまったことである。
①被害者救済及び被害防止の為に新たな対応はされないこと
②低周波音苦情者の大半は因果関係が認められない虚言者であること
 ところが、事故調の調査には根本的な不備と言えば不備、寧ろ「罠」と言うべき瑕疵がある。公害等調整委員会等でも同様の「罠」が仕掛けられてきたのだが、低域の空気振動についての環境変化を把握しなければならないところを、被害とは無関係の調査項目が含まれているだけではなく、法治国家では禁じられている「拷問」も行われている。
調査は、日本国憲法が唯一「絶対に」と明文(第三十六条)で「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」としているにも拘らず、理工学関係者の手に依って設計構築された、被害との対応関係は決して得られない「閾値実験」なる「拷問」のため「無響室」へ被害者を送り込んでいる。
 被害者の人権を全く無視しているこの実験は「足の骨折を訴えている被害者を、歩かせて事実か否かを判断する」というもので、医師でない者が、いや誰であっても「低域の純音」をヒトに浴びせる行為は、低周波音被害者を作ってしまう可能性があり、被害者の症状を悪化させる危険な実験であって、医師はこのような時代錯誤の実験をすることはない。
 「閾値実験」は次のように記載されている。『発症者群と対照者群を比較して低周波音領域を知覚する能力に何らかの違いがあるか、発症者群は低周波音への感度が高いという特徴を有するかを調査するため、発症者群及び対照者群それぞれについて、低周波音領域の4つの周波数(31.5Hz、40Hz、50Hz、63Hz)の純音を無響室において椅子に座った被験者に聞かせ、それぞれの音に対する聴覚閾(いき) 値を測定した 』
 また、化学物質過敏症なら、害をなす物質が被害者の曝露環境に存在することが原因であり、電磁波被害は、例えば携帯電話基地局からの電波が、低周波音被害は音源機器からの音波が、夫々被害者の曝露空間に到達した結果の被害だから、その当該機器から電波や音波が空間を突き抜けて被害者宅に届いていることが確認されなければならないが、本報告書にはそのような記述は存在しない。調査はされていないのだ。

対して汐見文隆医師は、低周波音被害アリとの判定をするについて、2010年4月「低周波音被害を追って 低周波音症候群から風力発電公害へ」で、次の指摘をしている。
 「不安定な空気振動だから、5デシベル以下では差があるとは断定できない、少なくとも10デシベル以上、できれば20デシベル前後の差が欲しいと考える。
 もう一つの問題は周波数であり、はっきりとしたピーク(卓越周波数)が被害現場では認められる。ピークの存在が外部から異常な低調波音が侵入していることの証明だ。
 そのピークが出現する周波数についての私の経験から、これまで分かりやすい数字として10~40ヘルツとしてきたが、8~31.5ヘルツの方が正しいかもしれない。
 50ヘルツ以上の空気振動は騒音になる。私の被害現場での経験では、50ヘルツ以上は低周波音被害をマスクする側に回る。小型の家庭用電気冷蔵庫の50ヘルツの稼動音で苦痛が楽になると、深夜に布団を台所に引っ張って行って寝ていたご婦人もあった。
 8~31.5ヘルツのあたりに、10デシベル以上の差のピークが証明され、それが被害症状の有無と一致すれば、被害症状は客観的に裏付けられたことになるこれで[結果=原因]が成立だ。」
 この意見は、苦しい時、何でもない時、それぞれにマニュアル操作で計測記録したものであり、かつ被験者数も少なかった時代のものだが、自動操作で記録する現在ではもう少し厳密に判定可能だと考えられる。
 風車低周波音を超低周波音ではなく、〝通常可聴周波数範囲の騒音の問題〟にすり替えてしまった「風力発電施設から発生する騒音等への対応について」では、「風力発電施設騒音の評価の考え方」で、「評価の目安となる値」を『「残留騒音」(一過性の特定できる騒音を除いた騒音)からの増加量が5dBに収まるように設定する』、としていて、5dB差(エネルギーは3.1倍差)の考え方を示している。
 また、消費者庁はガス給湯器が原因の低周波音について、その卓越は6dB差(エネルギーは約4倍増)との考えを示してもいる。
 即ち、国家の低周波音被害防止基準も、厳密に考えるならば、5dB増、6dB増以内に押える、との方向が見えており、被害がある時の音圧レベルが、被害が無い時の音圧レベルに対して、安定的に〝3dB増〟があれば被害を認定するのは妥当である。況や3dB増(=エネルギーは2倍増)で被害を認めない理由は無い。
 ところが卓越周波数について、消費者庁の「電気給湯器(ヒートポンプ)被害は100万件に1人であって、そのほとんど全てが物理現象の因果関係が認められない」とした「家庭用ヒートポンプ給湯機調査」では「本報告書での運転音の周波数分析においては、両側の中心周波数の音圧レベルに対して10dB 以上のピークを卓越周波数と呼ぶこととした」としてガス給湯器では卓越は6dBであるのにその差について説明は無い。
 片側10dB未満のピークは卓越周波数と呼ばないとして、被害がある時とない時の9dB差(エネルギーは約8倍増)ですらの物理的因果関係を否定しているのだが、医師でない者を被害の専門家扱いするように社会を唆(そそのか)し、医師の見解を求めることもなくまとめられた意見だ。ここで見られるように〝卓越〟なる意味も恣意的で、権力の意向次第で如何ようにも解釈可能な数値だ。こんな調査を被害者が是認できる筈がない、この調査を受け入れる者等は加害者の証だ。
 環境省は「低周波音防止対策の考え方」において、「低周波音に関連すると思われる苦情が発生した場合、苦情発生の状況を把握するとともに低周波音を測定し、1/3オクターブバンド周波数分析(必要に応じて狭帯域周波数分析)を行い、音圧レベルの概要を知る」とし、狭帯域周波数分析「FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)解析」を示している。FFTとは、DFT (Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換) を計算機上で高速に計算する算法(アルゴリズム)のことで、ある空間、ある時間に於いて存在した振動周波数を狭帯域で表示する分析法であり、直接の証拠とはならないが、その証明を補強するのに役立つ証拠であって間接的証拠である。いくら周波数を細分化したところで被害の証明にはならない、被害の証明には音源に発した空気振動が受音側へ伝搬したことが条件だからだ。
 一度放たれた空気振動エネルギーは距離減衰を伴いながら放射状に拡散し、構造物によって反射、回折、共鳴、干渉などの変化を伴った結果として、受音側へ伝搬するのだから、音源側の空気振動の変動と受音側のそれとが一致することが、唯一、音源の空気振動が受音側へ伝搬したことを示すのであり、音源側の空気振動と受音側の空気振動を突合して空気振動エネルギーの伝搬を示せないのだからFFTは傍証であり幻想に過ぎない。
 そもそも、空気振動が「音源から空間を突き抜けて受音側へ伝搬した」ことの証明には次の三要素が不可欠である。
①    インフルエンス(影響力 Influence ) 周波数(Hz)&デシベル(dB)で示される卓越の継続
②    ポジショニング(空間的配列 Positioning )音源と受音点の計測器の位置関係
③    タイミング(時間的配列 Timing ) 振動が生じた時刻に受音側で空気振動に変動を生じているか
この三要素が揃わなければ、空気振動は何処(東西南北)から伝搬したのかは不明(音源が溢れている、住宅密集地では重要)であり、多数の加害音源があるスーパーマーケットや工場、コンビニエンスストアでの音源調査には特に重要である。
 その為には「パターン計測:音源側には音源機器に手が届く位置に計測器を配置して、エネルギーの大きい機器から、順次スイッチをオン・オフし、受音側への影響を把握する」が必要となる。


 消費者庁の杜撰な調査について、事故調は調査をしたと主張するが、被害者なら「適正な調査は100%しなかった」と分かる文言がある。「訴えられている隣家の方の協力が必ず得られるかどうか難しい」との主張は、「調査を、音源側には事前告知して実施する」との意味だから、適正な調査は望むべくもない。調査されることを事前に察知したか、或は調査機関から通知を受けた音源側が、音源の減弱操作をした結果が因果関係を否定し、現在の低周波音地獄を作ってきた歴史に、日弁連と同様、事故調は関心が無い。
 加害者は、東日本旅客鉄道株式会社でも鹿島建設株式会社でも、三洋電機株式会社でも首都高速道路株式会社でも、東京都でも国立市でも、中野区でも公害等調査委員会でも卑怯な音源操作が繰り返し行われ、因果関係は証明されないまま、被害者の人権は認められることなく蹂躙され、家庭用給湯器や大型風力発電機へと被害が拡大してきた歴史を探ろうともせず直視しない。
 事故調の報告書は、医学や科学とは無縁の、専門性などは全く認められないウソ話だから、この調査を是認する被害者は一人としていない。万一、事故調への調査を勧奨する者が居たら、その者等こそが加害者であり、新たな被害者を作る愚か者の証左である。
 では、何故このような出鱈目の結論になるのか不思議に思う向きがあるかもしれないが、実際は、被害を否定するために虚言者を寄せ集めた結果なのだ。虚言者を集める権限は消費者庁にあり、環境省が理工学関係者を集めて被害を否定してきた手法を踏襲しているだけでなく、政府御用達の調査は新たな権益にもなっている。
報告書は、事故等原因調査の経過に「2.2 調査体制」の項目があり、次の記載がある。
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調査委員会は、医学・公衆衛生学を専門とする佐藤敏彦専門委員(青山学院大学大学院社会情報学研究科特任教授、医学博士)、環境学を専門とする清水亮専門委員(東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授)、製品事故の調査を専門とする松本浩司専門委員(独立行政法人国民生活センター商品テスト部企画管理課課長補佐)の3名を担当として指名し、工学等事故調査部会及び調査委員会で審議を行った。
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 佐藤敏彦氏は、低周波音曝露による健康影響が出やすい人の特徴の第一に「①精神的疾患を有する人あるいは精神疾患の気質を有する人」と報告した、平成23年3月「平成22年度移動発生源の低周波音等関する検討調査業務報告書」に於ける唯一の医学系委員である。
 現在の低周波音被害に於ける医師法違反を放置したままでは、今後も社会は被害者救済には動くことが無いだろう。
 


四.風力発電の環境影響評価
 国家は、2010(平成22)年に「風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」を設け、政府御用達要員を検討委員として集め「効率的・効果的かつ適切な環境影響評価を実施することは、再生可能エネルギーの導入促進や地球温暖化対策の推進の観点からも強く望まれる」として、平成23年11月、法施行令を改正し風力発電(巨大風車)を法対象事業に追加した。(第1種事業:1万kW、第2種事業:7,500 kW)
 国民の総意であるらしく偽装し、民主的国家たる体裁は保たれて、平成23年1月13日には風力発電所の現地調査を「滝根小白井ウインドファーム」で行い、平成22年12月9日には航空会館で「風力発電施設と騒音・低周波音に関するヒアリング」を独立行政法人労働安全衛生総合研究所の高橋幸雄氏、一般社団法人日本風力発電協会の木谷勤治氏、北海道寿都町片岡春雄町長、静岡県東伊豆町熱川風車被害者の会の川澄透氏を招集し、アセス推進(風車建設推進)の意見を述べさせてもいる。
 高橋氏は、①労働環境での低周波音被害はない、②低周波音は聴覚反応として知覚される、③心理的な反応として、アノイアンス(不快感)がある、等と理工学関係者が医師を排除して得た実験結果に基づく閾値論を前提にして、汐見医師とは正反対の低周波音被害は存在しないとの意見を述べているが、確かに、労働安全衛生総合研究所には住宅での低周波音被害相談は届けられないだろうから、無理からぬ意見ではある。
 また、①風車を環境影響評価法へ義務付けよ、②参照値を風車(だけ)には適用しないと宣言せよ、③風車被害の疫学的調査を松井検討員に実施させよ、この三点をを環境省へ依頼するとした川澄氏は、「風力発電の被害を考える会・わかやま」等も参加する「風力発電全国情報ネットワーク(代表:武田経世)」の主要な活動メンバーである。
 ところで、環境影響評価法は、日本における環境影響評価(環境アセスメント)の手続き等について定めた法律であり、その目的は次の通りである。
 第一条(目的)この法律は、土地の形状の変更、工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要であることにかんがみ、環境影響評価について国等の責務を明らかにするとともに、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め、その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により、その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とする。
 言い換えれば、「環境影響評価とは、開発が環境に及ぼす影響の内容と程度および環境保全対策について事前に予測と評価を行い、保全上必要な措置の検討をすること」であり、開発することを前提に、その影響を極小化しようとする、事業者が実施する手続きだから、どれほど杜撰な予測であっても、どれほど出鱈目な評価をしても罰則はない。
原子力発電所や火力発電所と同様に、風力発電施設もアセスの対象となったら最後、あの手この手と策を弄されて、施設は必ず建設されると言って良い。現実は、とうの昔から今に至るまで、事業者が暴虐の限りを尽くして、自然破壊と共にヒト・動物の住処を奪い、ヒトを突然死させてきたにも拘らず、お咎め無しだ。
 加えて、風力発電施設は過疎地の山地に建設されてきたこと、人的被害の実態が隠されていることもあって、反対する絶対人数も少なく、ほぼ全ての反対運動は頓挫してきた。膨大なアセス資料は庶民には解読不可能な物理現象の表記で埋め尽くされ、Web上に開示される資料は印刷もできず、大抵は僅か二週間程でその姿は消されてしまうのだ。
ところが、風力発電を推進する環境省の当該頁には、汐見文隆医師の2010年11月8日「低周波音被害者の人権を認めない国・日本」が掲示されている。汐見医師と言えば、低周波音被害の泰斗として、前々より「巨大風車やエコキュートはリコールすべきだ」と、その建設には反対されてきたのだが。
 この中で汐見医師は「低周波音被害は国家の無為無策に依って拡大している」と自説を述べている。凡そ次の概略である。
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① 被害現場(住民の居住場所)で、風車が回転して苦しい時と、風車が停止して楽な時との測定値に大差があれば、原因は証明されたことになる。因果律において、結果から原因を考察する医学の方法論は確立されている。
② 「風力発電施設から発生する騒音・低周波音の調査結果(平成21年度)」によれば、「環境省では引き続き関連する調査・解析を実施し、実態の解明に努めていくこととしています。」(2010年3月29日発表) 一体いつまでかかるのですか? 住民被害をいつまで放置するのですか?*結果→原因で答えは簡単に出せるのに、原因→結果を考える工学的手法を悪用して、問題をわざと複雑化し、引き伸ばしているのではありませんか?
③ 風車被害者はヒトですか、モノですか? 手法は医学ですか、工学ですか?
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 しかも、風車をアセス対象にすることに反対する医師のこの意見書は、風車建設をアセスの対象にして推進するよう環境省へ望むとの意見を述べた、風車被害者の会の川澄氏が持ち込んだ資料の中にあるのだ。
当時、耳目を引いた汐見医師の風車被害調査は、2008年3月28・29日に地元TV局クルーを従えての苦情者宅訪問だったが、両日共に風は無く風車が回らないので、問診を受けた14名の苦情者は皆「久々によく眠れた」と発言し、汐見医師が用意した低周波音レベル計を用いて計測した結果を見ても、医師は「この低周波音記録では被害アリとは言えない」と丁寧に説明されていた。
 同医師は被害判定するについて、低周波音なる物理現象の把握なしに意見されたことはない。「低周波音被害者の人権を認めない国・日本」でも記載があるように、被害者の曝露環境変化を把握していない物理現象では被害アリとの意見を出されたことがないし、50Hz以上の高い周波数では低周波音被害ではなく騒音被害とされてきた。
 ところが、川澄発言は「3月末に、低周波音を35年ほど研究されております汐見先生にお越しをいただきまして、健康被害を訴えている約20名の方の問診をしていただき、これはあくまでも風車が原因の遠因性の自律神経失調症であると、このような診断をいただいたわけであります」とあり、示された低周波音記録は「2009.04.22 風車回転、2009.04.10 風車停止」である。
 注目を集めたイベントとなった会場には、各種メディア、事業者から自治体の職員まで溢れんばかりに詰め掛けた関係者の多くは、汐見医師の2008年3月28・29日調査結果を承知しており、行政や事業者に「①風車苦情者は虚言者である」とスタンプされた瞬間であるだけでなく、「②風車被害は大した被害では無い」、と社会が共通の認識を獲得し、以後、風車苦情者は侮蔑され続け、加えて汐見医師は面会したことも無い6名を含めて、2009.04.22 風車回転のデータを基に、3月に被害アリとの意見を述べたことにされ、「③ 汐見医師は無責任な意見書を書く」との風評被害を受けることとなった。
 川澄発言には「一番重要なポイントは、事業者が風車建設に先立ち補助金申請のために実施した環境影響評価書、この内容が原因の被害である」ともあり、「アセスが不充分だったから被害が発生した」との認識は「適正なアセスは実現できる」と空想しているらしく、自分達には深刻な被害が無いのだろう「風車建設反対、アセス対象にしてはならない」との話にはならないから不思議だ。
 汐見医師は常々、環境影響評価法を「アワスメント」であり実効が無いと批判され、低周波音被害者の救済の為に低周波音を学習されたのだが、外因性ならぬ「遠因性」の疾患があるとは、医師でなくとも訝る。
 これが、被害実態を知ろうともしない弁護士やメディア、環境ジャーナリストの発言なら未だしも、被害者が希望する事柄であるなら、日本各地に風車被害を提供しようとする東伊豆の風車苦情者は「虚言者」よろしく、貴方の町にも水俣病を、貴女の村にもイタイイタイ病を、君の郷にも砒素被害を、等と活動する公害被害者が人類史上存在する筈はない。
 低周波音記録もないままに「風車が原因の遠因性の自律神経失調症と診断を受けた」との虚言は、風車被害者救済の道を閉ざし、多くの風車反対運動が頓挫する主因となったのだが、川澄氏はここで、騒音と同様の疫学調査を松井利仁検討委員に求めている。「生活妨害程度の騒音・振動被害と、深刻な健康被害である低周波音被害は全くの別物」であるとの汐見医師の医学的見解は理解できなかったらしく、医師の意見を全く無視している。
 


五.犯罪被害者
 低周波空気振動曝露は戦争、テロリズム、ストーカー、窃盗、暴行、傷害等の刑事犯罪と寸分違わない暴行傷害事案であり、全ての低周波音加害者の根底には、被害者の尊厳は無視して構わないとの「差別意識」が通底している。低周波空気振動曝露は災害でも事故でもなく、国家のみならず大学、日本弁護士連合会や日本消費者連盟等がその圧倒的な地位と情報格差を利用した特殊詐欺でもある。
 火山噴火や地震、津波等の災害で被災者になった人々、戦争やテロで国を捨てて難民となった人々、貧困ゆえに栄養失調や感染症で健康を害した人々は、家族も家も地域社会も日常も奪われて、過酷な生活を強いられるのだが、低周波音被害者の暮らしと大きな差はない。
 2017年2月23日、東京都小金井市で昨年5月、芸能活動をしていた女子大学生を刺傷した、ストーカー事件の裁判員裁判の公判が開かれ、被害者は次のように率直な意見陳述をした。
 「口や右足の親指にも麻痺、頭がおかしくなるくらい悔しい。家族と過ごした時間、友人と他愛もない話をして笑っていた時間、大学で大好きな勉強をすること、大好きな音楽やお芝居をすること、大切に積み重ねてきたものや時間の全てが一瞬で奪われた。普通に過ごしていたはずだった毎日を返してほしい。傷のない元の体を返してほしい。犯人を絶対に許してはいけない、犯人は今すぐに消えてほしい、私みたいに苦しむ人がいなくなるように、厳しい判決を出してほしい。」
 「あすの会」という、山一證券問題に際して逆恨みした男性によって夫人が殺害された岡村勲弁護士や光市母子殺害事件の被害者遺族等が設立した犯罪被害者の会がある。岡村氏は「夢を奪われた妻が、お釈迦様の前でのんびりしているとは到底思えない。どんなにか悔しかっただろうと思うし、この恨みを晴らしてやりたいと日々思っている。」と心情を吐露している。
 低周波音被害は、主たる影響が空気振動影響を受けやすい鼓膜経由の中耳内耳の損傷にあり、曝露の結果として、蝸牛や前庭に過大な負荷がかかり、聞こえが劣化し、ふら付いて真っ直ぐに歩けなくなり、空気振動に依って臓器が痛む被害だ。
 低周波音曝露を受けて、「低い音が聞こえるようになった、真っ直ぐ歩けなくなった」と被害を訴えている者に対して、前庭が影響して被害のメカニズム云々というのは、「聞こえたから被害になるのではない」「めまいがしたから被害になるのではない」という複数の医師や理工学関係者の意見に反し、因果関係を間違えている。
 疫学では、エコキュート被害や風車被害を救える可能性があるが、その他の、例えば重機被害、或は工場やスーパーマーケットが原因で衆を頼めない被害は、条件を整えられず調査ができないどころか、条件整備に10年と掛かってしまい、救済されない可能性すら否定できない。
 消費者庁事故調査室は、風車被害を門前払い同然に調査対象から外しただけでなく、調査したとするエコキュート被害ですら、PPM(100万件に一人)の被害であり、当時の出荷台数約450万台から算出する被害者は大目にみても5人程度と考えられ、把握した112名の95%は虚言者だったと報告した消費者安全調査委員会の中心メンバーの一人は、環境学を専門とする清水亮専門委員(東京大学准教授)だ。
 低周波音被害に於いて、自分の傷害や致死の原因を作った者達を許すことは、国家や環境コンサル、疫学、環境学で職を得た者達を野放しにすることであって、更なる被害の拡大にしかならず、万一、被害者が「加害者を許す」と主張すれば、被害者の救済にはならないどころか、既に社会は環境計量事業者及び環境計量事業を学んだ末端行政を中心に、他の被害者を新たな侮蔑の対象としてきた。
 国民には食糧、教育や医療を保証せず、核実験やミサイル発射に明け暮れる近隣の某独裁国家では、一時凌ぎの食料を手当てされた国民が「将軍様マンセー」と叫び、為政者を崇めるらしいが、風車の被害で死亡した人の家族が、松井利仁氏を被害解消の専門家として処遇することは有りえないし、エコキュート被害に遭って自宅を捨てざるを得なかった被害者が清水亮氏を被害者救済の切り札にして「マンセー」と礼賛することは、お天道様が西から登る時だけだ。
 現在の被害を作ってきた加害の専門家たる国家御用達の者等が、正義の味方気取りに国家の対応を批判することで、責任を他者に転嫁し、同時に自身が新たな利権を貪るような構造を、被害者が是認することはない。

20190411

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