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20170709 講義「低周波音被害に於ける人体実験」

総務省(公害等調整委員会)の被害者対応
 国家は、環境省、総務省(公害等調整委員会)、消費者庁で被害者を虚言者扱いし、国土交通省及び厚生労働省は、被害は無いとばかりに頬かむりしたままだ。会はこれまで、環境省と消費者庁の対応については凡そ伝えてきたのだが、総務省(公害等調整委員会=公調委)の対応も杜撰であり、公調委は、住環境限定の被害を労働環境に当て嵌めて被害否定する者を、都道府県の公害審査会に呼びかけて開催する「公害紛争処理連絡協議会」に講師として招き、指導させている事実を伝える。
 平成26年6月5日、公害等調整委員会が〝都道府県公害審査会会長等との情報・意見交換等により公害紛争処理制度の円滑な運営を図るため〟として開催した「第44回公害紛争処理連絡協議会」での、高橋幸雄 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 上席研究員の講演だ。その最使用されたスライド「低周波音の知覚・影響・評価について(20140605低周波音の知覚影響000308035_高橋幸雄.pdf)」を別紙添付する。
低周波音の知覚影響 高橋幸雄
 これまでに確認されている低周波音被害の内、労働環境で生じたケースは3例しかない。汐見医師が女性事務員の例を確認された後、ソフトウエア会社勤務の部長秘書、研究所勤務の男性研究者の例のみであり、健康なヒトが活動する場である労働環境に被害例はなく、子供や老人、静養を要する人、働けない人が暮す住環境で被害は発生する。
即ち、労働環境(ヒトは交感神経優位の状態)に被害は無く、住環境(ヒトは副交感神経優位の状態)で被害は発生するのだから、自律神経の働きを無視したまま被害を論ずることは不可能であるにも拘わらず、労働環境に被害がナイから住環境の被害は認められない、というのでは本末転倒も甚だしい。
 このような意見はスタート地点からして、事実誤認というよりも被害否定の立場で出鱈目の限りを尽くす状態となっていて、汐見医師が指摘するところの「公調委は公害を理解していない」のだ。
幾つかの点を以下に指摘する。(ページ数は数字はスライドのページを示す)
p-2 「低周波音苦情の現状(1)」
 苦情が増加している理由は「一般市民の関心が増加している」のでなく、現実に風車や家庭用給湯器では100人単位で新たな被害が発生しているからだ。
p-3 「低周波音苦情の現状(2)」
 「発生源が不明な事例も多い」この点から「本当に低周波音かどうかも分からない」と牽強付会するが、実態は、相談を受ける自治体が①調査能力を保有していないだけでなく、②虚言者扱いして調査しない、③参照値で被害を否定してきた、からであり、この点は、事故調や日弁連意見と全くの同根である。
p-4 「低周波音苦情の現状(3)」
 「国内で低周波音の基準値は制定されていない」というが、高橋氏等が、①「医師の関与を否定し」、②医師でもないのに被害判定をし、③世論を捻じ曲げて判定基準を作らなかったのであり、④参照値やG特性値は被害否定の根拠として使用されているのが現実なのだから、メディアを批判するのはお門違いだ。
また、「一部に、不正確な情報、興味本位の情報の流布も散見される」このような表現の根拠は、推論するしかないのだが、これまでにメディアや行政で共有されている情報の一つに、平成22年12月9日航空会館で開催された第3回「風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」に於いて、川澄透氏(熱川風車被害者の会代表)が、「熱川へ3月末に来た汐見文隆医師が、4月10日及び4月22日の低周波音記録を基に、面会したこともない6名を含めた約20名を〝風車が原因の遠因性の自律神経失調症と診断した〟」と述べて、風車苦情者は全くの虚言者であると、スタンプされていることがある。
 この事実は現在も環境省のHPに掲載されており、「風力発電の被害を考える会・わかやま」等も参加する「風力発電全国情報ネットワーク(代表:武田経世)」の主要な活動メンバーである川澄氏の虚言が基で以後、多くの風車建設反対運動が頓挫する原因となっているのだが、「風車被害は大した被害では無い」と社会が共通認識を獲得しただけでなく、同時に「汐見医師は〝無責任な意見書〟を書く」という風評にも曝された悲しい現実がある。
而して、現在の風車被害者の救済は望むべくもなくなり、延いては風車被害者だけでなく、低周波音被害者全体が侮蔑の対象とされ、更なる窮地へと追い込まれることとなっている。
p-5 「音についての基本事項」
 「物理的現象としての音は、空気振動の事であり、〝音〟云々」というのだが、オトで難聴は生じない、空気振動が原因現象であることは医学的、社会的一般常識であり、聞こえることで低周波音被害は生じない。
また、「一般的に〝音〟」とは〝心理的現象〟」だ、「聴覚器官で検知し知覚する」というが、事実と異なり、低周波音被害は「音」とは何の関係もない、空気振動が鼓膜を打撃し、繊細な器官である鼓膜・中耳内耳を損傷する傷害である。予て医師にも理工学士にも聴覚や平衡覚は侵襲器官として知られている。
 そもそも低域の空気振動は皮膚が検知し痛覚が反応する生理反応であり、心理反応とは別物であるのに、これを否定してきたのが高橋氏のような理工学関係者である。
 音に関する基本的な量を「音の大きさ、音の高さ」としていることも大嘘であり、低域の空気振動の最重要点は高域のそれとは到達力が桁違いに強いことだ。
p-6 「音圧レベルに関する注意」
 63Hz辺りを境として、以下の低い周波数で低周波音被害が生じており、超える高い周波数では被害は発生していない。最初から騒音レベルと低周波音被害は無関係であるのに、〝A特性音圧レベル〟等という、低周波音被害とは無関係の項目は、ただ問題を複雑にするだけだ。
p-7 「低周波音とは?」
 「一般に、20Hz~20kHzの周波数範囲を可聴域と呼び、その範囲の音を可聴音と呼ぶことが多い。20Hz以下の音を超低周波音、20kHz以上の音を超音波と呼ぶ、低周波音は、明確に定義された用語ではない」という。しかし、環境省はこれまでの聴感実験等の結果から10~20Hzを可聴音同様に〝聞こえる、感じるオト〟として手引書等で区別なく使用しているし、この点は医師の意見も同様であって、理工学関係者でも20Hzが特別の区切りではないことは周知されている。しかも、低周波音なる定義が明確でない理由は、高橋氏の様に医師でない者が医師であるかの如く、低周波音被害の所掌を医師に奪われないよう利権を死守してきた結果だ。
 最終段でも、「今後は医師の意見を取り入れた方が良い」などとあるが、医師を排除して自分達が作ってきた被害を、まるで他人事のようで不届き極まりない話だ。〝超低周波音〟が〝聞こえないオト〟同然に使用されている現実の方が、余程変なのだ。
p-8 「ヒトの聴覚特性」
 「ヒトの聴覚特性は、周波数が低くなるにつれ、感度は鈍くなる」ともあるが、低周波音被害はラウドネスレベルも含めて、聴覚は関係が無い、皮膚が感知する痛覚の反応だ。
p-9 「苦情者の聴覚感度」
 「苦情者の聴覚感度が特に良いわけではない」と言うのだが、実験結果が示す通り、聴覚によって被害を感知しているのではないのだから、当然である。
p-10 「振動感・圧迫感の知覚(低周波音の特徴)」
 「低周波音も、基本的に聴覚によって知覚する」とあるが、前項までに記載したように、実験結果が被害者の主張は聴覚とは関係ないことを示しているのに、無理やり「被害は聴覚によって知覚する」とする、高橋氏等理工学関係者の考えが間違っている。
 また、「10~63 Hz付近を中心として、音圧レベルがおよそ80 dB(Z)より高くなる/振動感・圧迫感を感じやすくなる [中村他:文部省科研費報告書(1981)」とあり、
「聾者は低周波音を胸部などの振動で知覚できるが、その閾値は、健聴者の閾値よりも30~40 dB〔Z〕程度高い(8~63 Hz)〔山田et al. :J Low Freq Noise Vib.2(3)、32-36(1983)]」
とあるが、低周波音被害者は聾者ではないのだから、単純比較する方が間違っているのであって、
これら実験はいずれも①短期実験の結果であること、気導音に限定し②骨導音を排除していること、風車被害は凡そ5Hz以下で生じているにも拘わらず、③5Hz以下の実験は為されていないこと、④複数の理工学士が〝自身が医師ではないのだから被害についての論評はできない〟旨の意見を述べていること、を無視している。
p-11 「低周波音による心理的影響)」
 「低周波音による心理的影響」と繰り返し、耳閉塞や鼻出血・歯茎出血の生理的影響、転倒骨折等の傷害みならず、突然死に至る深刻な被害をアノイアンス等に摩り替えて矮小化する行為や、「低周波音による影響は個人差が大きい」というのは、「低周波音による被害は〝聞こえ〟で判定する、私が聞こえない音を聞こえると言う者は虚言者だ」との言い換えに過ぎず、傷害を否認するための言い訳だ。
 暴行は、ぶたれても〝何でもない〟から〝殺人〟まで「ピンからキリまで」の差がある。
p-12 「低周波音による生理的影響」
 「低周波音による生理的影響・住環境で発生する程度の音圧レベルの低周波音によって生理的影響(めまい、耳鳴り、吐き気、血圧の上昇、心拍数の上昇など)が生じるとは考えにくい」と鸚鵡の繰り言のようだが、生理的影響は空気振動に依る鼻出血、歯茎出血、鼓膜が弛んだり傾いたりして耳閉塞し聞こえが劣化するし、平衡覚が打撃を受けて、ふらついて転倒・骨折する深刻な被害の摩り替えである。。
 示された実験〔山田et al. :J Low Freq Noise Vib.5(1)、14-25〔1986〕]は〝曝露(2分)〟、周波数16Hz 以上であり論外なのだが、「住環境で発生する低周波音の音圧レベルは、これらよりずっと低いので、問題無いはず」といい、自律神経が強く影響を受ける低周波音被害について、気導音に限定し骨導音を排除した上に、数値も示さず〝はず〟で片付けるとは、加害者そのものだ。
p-13 「低周波音による睡眠影響」
 「軽度の影響が生じる可能性がある」などとは軽傷の被害者であり、重傷者は〝全く寝られない〟、生きるか死ぬか、それとも我が家を捨てるか、という被害は取り上げようとしないのだ。
示された研究結果も周波数10Hz以上、曝露時間30秒であり、気導音限定で骨導音を排除しているのだから論外だ。
p-14 「低周波音による身体的(器質的)影響」
 「作業環境で発生するような音圧レベルの高い低周波音に長期間曝露される場合、または衝撃的な低周波音に曝露される場合を除いて、低周波音による身体的影響は生じないと考えられる」というが、それは労働環境での話だ。
繰り返しになるが、健康なヒトが働く労働環境では被害は生じていない、老人子供や静養が必要なヒト、或は健康なヒトが心身を休め賦活させる場である住環境で発生する被害だから、条件が全く異なり、このような単純比較をしてはならない。
p-15 「低周波音による影響の評価指標は?」
 「低周波音による影響の中心は心理的影響である」というのは、全述したように深刻な被害を排除し生理的影響を過小評価しているだけである。また、「騒音レベルをその評価指標とすることには無理があるという実験結果が多い」というのも、騒音レベルと低周波音被害は関係がないことを理工学士の手に依る実験結果が示した通りだ。
 更に、「低周波音に対する標準的な評価指標は未確立」等と言うが、暴行傷害事案を評価する指標が存在する筈がない。民主的な国家では刃であろうと弾丸であろうと、将又車両であろうと手榴弾であろうと、これを他者に向けて投擲すれば暴行であり、その結果転倒して骨折したり、或は鼓膜が損傷したら傷害である。空気振動が原因現象だというだけで、被害が否定されているのだ。
p-16 「心身に係る苦情に関する参照値」
 「心理的な不快感、アノイアンス等、心身に関する苦情が訴えられた場合に、その原因が低周波音なのかどうかを判断する目安」だとの主張には、繰り返しだが科学はない。
 「心身に係る苦情に関する参照値」は短期実験の結果であること、気導音に限定し骨導音を排除していること、風車被害は凡そ5Hz以下で生じているにも拘わらず、10Hz未満の実験は為されていないのであり、「物的苦情に関する参照値」も短期実験の結果である。
 また、10パーセントタイル値によれば、日本人【平成29年1月1日現在(確定値)】1億2682万2千人の内の1268万人は取り残されるし、第一、10Hz92dBなどという住環境が何処にあるというのだ、典型的な低周波音加害源であるコンプレッサーが複数でも90dBが観測されることはないから、被害者はコンプレッサーを枕にしても被害は認められないのだが、90%の人は大丈夫そうだから確かに、「大部分の人に適合する」のだろう。
 しかし、「実際の苦情例にも、よく適合することを確認済み」というなら、数例ということはないだろうから、多数の苦情者を診断をした医師の名前を明らかにすべきである。
p-17 「参照値」に関する注意点
 「参照値」に関する注意点として「音源との対応関係の確認が必要・重要」としているが、被害者を頭から虚言者扱いし、音源を減弱操作して被害を作っておいて、何が対応関係だ、音源が駆動しなかったら被害が存在する筈がない。況して、集合住宅など建屋内にあって目視不可能な音源、工場や大規模施設などの音源が多数存在する場合は、対応関係を調査することが極めて困難だから、被害者が納得できるような調査がされたためしがない。
 しかし環境省は、「測定値が参照値以下であっても慎重な判断を要する旨の周知」について、繰り返し都道府県の環境部門へ事務連絡しているのだが、慎重に判断をした結果、測定値が確認されたからといって、被害解消には繋がらない。家庭用の給湯器を撤去移設するについてさえ数十万円の費用が発生するのだから。
 また、参照値が科学的だというのであれば「住民の苦情に対処するためのもので、アセスメント等へは利用しない」などとは言わず、アセスに適用したら良い。
p-18 「まとめと今後の課題」
 「現時点での科学的知見からは、聴覚閾値以下の低周波音が問題になる可能性は低い⇔実際には、苦情を訴える人が少なくない。また、個人差の原因もよく分からない」「医学系研究者の参加、科学的に正しい情報の発信・普及など」とあるが、こうやって「医師でもない者等が医師であるかの如く偽装していること」が、最大の非科学的要素なのだから、こんな嘘話に「科学的知見」なんぞある筈がない。
 個人差の原因が分からないのは、大方のヒトに個人差が無い「聞こえ」を前提に、深刻な被害を否認しようとしているからであって、原田正純氏、汐見文隆氏等、医師は「病気には個人差がアルのが当然」と述べているのであり、国家と闘い乍ら被害者を救済してきたのだ。
 高橋幸雄氏や理工学関係者が低周波音被害問題に容喙している限り、低周波音被害者が救われることはない。医師法違反であり、悪質な差別が生んだ被害だ。

 

以上
 

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