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20161113 事例研究会報告書

 国家は、確かめようのない地球温暖化、枯渇することのない化石燃料の代替エネルギー対策を標榜し、再生可能エネルギーの柱としての位置付けで風力発電を推進して、新たな被害者を生み出そうとしている。その騙しの手口の一つが「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会報告書(案)」に於ける、風車被害は〝低周波音(空気振動)ではなく騒音〟だとする誤魔化しで、その評価手法についての意見を国民に求めた。
結果発表を待つ迄もなく、汐見文隆医師のような臨床医がどこに存在するというのか、理工学関係者を被害の専門家として、できもしない疫学調査や、ありもしない他国の先進例を求める日弁連のような意見が大半を占め、被害者は苦情者と呼ばれて被害は否定され続ける。
 一方、11/4日(金)、アセス対象になった風車を日本国中に建設しようとする「風力発電の被害を考える会・わかやま」の女性活動家が60余年の生涯を静かに閉じた。死因は循環器不全であったらしい。ところがこの女性は、私が日弁連に風車起因の低周波音被害を報告した最初の人物である。
 ここに、考える迄もない当たり前の常識が通用しない現実がある。
 図は、会が調査した物理現象の記録で、巨大風車特有の1Hz、2Hz、3Hz辺りの空気振動が、死者の全身を打擲し続けたことを裏付けている。
 貴方の町にも水俣病を、貴女の村にもイタイイタイ病を、君の郷にも砒素被害を、等と活動する公害被害者は古今東西未来永劫存在する筈がない。いずれ〝この者達は虚言者だ〟との烙印を押されることになる、そんな未来の話ではなく、既にスタンプされているからこそ、国家も事業者も躊躇することなく加害音源建設に邁進する、できる。
 カナダの先住民居留地でモルモットにされたネコは「平均九十日で水俣病になった」という。実験結果は公表もされず、先住民はネコに与えられた魚と同じ水域で獲れた魚を食べ続けていた。その後、カナダ政府は水銀障害委員会をつくって患者を認定し、補償金を払っていたが、正式に水俣病とは公表していない。(いのちの旅―「水俣学」への軌跡 原田正純著)
 水俣病に罹ったネコは踊り狂って、自ら海に飛び込んで命を失った。たとえ実験室の外に暮すネコであっても、〝ワシは魚を食わない、鯨も食わず牛肉を食う〟などと言える自由はない。
 風力発電設備は、国家の方針として、2010(平成22)年に「風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」が設けられ、下記記載の検討委員等の手に依って「効率的・効果的かつ適切な環境影響評価を実施することは、再生可能エネルギーの導入促進や地球温暖化対策の推進の観点からも強く望まれる」としてアセスの対象となった。
(参考)検討会委員名簿
浅野直人    福岡大学法学部教授(座長)
柏木孝夫    東京工業大学ソリューション研究機構教授(座長代行)
荒井歩    東京農業大学地域環境科学部准教授
北澤大輔    東京大学生産技術研究所准教授
佐々恵一    福島県生活環境部環境共生課環境評価景観室長
鈴木雅一    東京大学大学院農学生命科学研究科教授
瀧澤美奈子    科学ジャーナリスト
田中充    法政大学社会学部教授
樋口広芳    東京大学大学院農学生命科学研究科教授
福嶋司    東京農工大学農学部教授
松井利仁    京都大学大学院工学研究科准教授

 その半年程前の2009年10月16日、足利工業大学総合研究センターの主催で「第10回 風力エネルギー利用総合セミナー」が開催され、風力発電の第一人者である牛山泉足利工業大学学長の招きをうけ、汐見文隆医師は基調講演をされた。
 同医師は、工学関係者を前に、医師でなければ被害者を救えないと、持論である低周波音症候群について述べられた。満席の大教室には、上記検討会の委員を務めた松井利仁京都大学准教授も退屈そうに座っていた。
 その松井先生は、日本弁護士連合会が纏めた、2013年12月20日「低周波音被害について医学的な調査・研究と十分な規制基準を求める意見書」に於いて、〝工学士の意見に、医学的根拠がある〟との言説を採用されている。低周波音被害の専門家である汐見文隆医師の言説には興味がなかったと思うのだが、今は北海道大学の教授だ。
 巨大風車をアセスの対象にしてくれ、風車被害者だけには参照値を適用しないでくれ、と風車被害者以外を取り残せと活動した、「風力発電全国情報ネットワーク」の一員である「風力発電の被害を考える会・わかやま」では、決して医師の意見が得られない松井先生の大学講義資料を「ご自由にお使い下さい」と提供され、ありがたく学習している。
 後に水俣病訴訟判決で「公序良俗に反する」として、「無効」判断された、水俣病の患者組織「水俣病患者家庭互助会」と新日本窒素肥料(現チッソ)が交わした契約がある。死亡患者に一時金30万円と葬祭料2万円、成人の生存患者には年金10万円、未成年患者には年金3万円を払う内容で、水俣病の責任は認めない「見舞金」の位置付けだった。「将来水俣病が工場排水に起因することが決定しても、患者家族は新たな補償金を要求しない」とする内容も盛り込まれていた。
 そこには、命の問題さえも金銭で解決できるという事業者の傲慢な暗黙の認識がある。
 おとなのいのち十万円、こどものいのち三万円、死者のいのちは三十万
 と、念仏に代えて唱え続けられたそうな。被害者の、取り返せないかつての日々を生き直す、との思いを込めて。
はてさて、突然死した「風力発電の被害を考える会・わかやま」の女性活動家に見舞金が支払われることは決してないのだが、国家のお声掛かりで検討委員を勤め、日本中に巨大風車を建設した一員として、風力発電推進団体からも感謝されるとは、国家お抱えの学者冥利に尽きる。 
 これが、低周波空気振動被害蔓延の一端である。

 


 以下は、「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会報告書(案)」についての意見の下書きである。
 何事も、誰であっても、事実が把握されないままでは正しい評価ができないし被害として悪影響がでる。仮に少数であっても、治癒しない障害である低周波音症候群被害が発生する前提で風車建設を強行してはならない。
 本案は、参考文献5『平成22-24年度 環境省 環境研究総合推進費(戦略指定研究領域)研究課題「S2-11 風力発電等による低周波音の人への影響評価に関する研究」報告書』を基に、「図3.全国29の風力発電施設備周辺164地点における風車騒音の周波数特性の分析結果」が中心的なデータとして位置付けられているが、この調査は、被害についての原因現象である、主たる空気振動がローター回転による5Hz以下の周波数で発生することを隠し、風車が回転することにより増加する音圧レベルも把握していない、国家の意思決定に資するだけの事実が明記されていない欠陥報告である。
 環境省は、低周波音防止対策事例集(平成14年3月)で、低周波音の発生源と発生機構について、風車起因の主たる基本周波数は数Hz以下になることを、従前より把握している。
1) 平板の振動:板や膜の振動を伴うものなど(大型の振動ふるい、道路橋、溢水ダムの水流等)
2) 気流の脈動:気体の容積変動を伴うものなど(空気圧縮機、真空ポンプ等の圧縮膨張による容積変動)
3) 気体の非定常励振:(大型送風機の翼の旋回失速やシステムのサージング、振動燃焼等)
4) 空気の急激な圧縮、開放:(発破、鉄道トンネルの高速での列車突入等)
続いて、低周波音の問題が発生する可能性のあるものとして風車が明記されており、風車はその構造から「翼が塔近傍を通過する際に、空気が急激に圧縮される」のだから4)に該当することが分かる。
 更に「発生源別の低周波音防止技術の概要 」で、次の記載がある。
 風車の超低周波音の発生原理は基本的には送風機のいわゆる回転音と呼ばれるものと似ている。大型発電用風車の場合は、羽根の枚数が少なく、回転数も小さいために正常運転でも超低周波音を発生することがある。
 その基本周波数f(Hz)は、翼の回転数をR(rpm)、翼枚数をZ(枚)とすると
f(Hz)=(RZ)/60で与えられ、この基本周波数とその高次の周波数が卓越する。
 大型発電用風車の場合は、一般に翼枚数は1~3枚(3枚が主)、回転数は3~60(rpm)程度であり、基本周波数は数Hz以下になる。
 ならば、現在の大型風車は巨大化した結果、ローターは10~20回転rpm程度だから、
10回転では、f(Hz)=(10×3)/60=0.5Hz(二次:1.0Hz、三次1.5Hz)
20回転では、f(Hz)=(20×3)/60=1.0Hz(二次:2.0Hz、三次3.0Hz)である。
 ところが、風力変動に依って10回転から12回転、15回転へとローター回転が変化すると、
12回転では、f(Hz)=(12×3)/60=0.6Hz(二次:1.2Hz、三次1.6Hz)
15回転では、f(Hz)=(15×3)/60=0.75Hz(二次:1.5Hz、三次2.75Hz)
 となって、5分、10分、1時間、2時間と計測対象時間を広げるに従い、ローター回転数の変動は平均化され、卓越は次々と隣接の帯域へと移り、帯域としての特異性を失ってしまう。即ち、卓越が鮮明であるなら風車起因の空気振動と言えるが、ローター回転数が不明か低域の空気振動の大きな変化を把握されていない場合は、風車の空気振動を捉えたとは言えない。
 また、残留騒音と発生した風車回転による空気振動との合算音圧レベルでグラフ表示されていて、風車が回転する前の空気振動と回転した後の加圧された空気振動の区別ができないだけでなく、低域の空気振動は僅かな風に10dBも20dBも変動するから、合算音圧レベルでは話にならない。

 

ここまでを次に纏める。
 

1.計測対象時間が8時間のデータ集積であり、ローター回転数は明示されていない。
2.風車起因の音圧レベルが示されていない。
3.「聴覚閾値実験」や「純音に対する聴覚閾値(ISO-389-7)」、「Moorthouse他による限界曲線」は、参照値同様に短時間実験且つ骨導音要素を欠き、しかも10Hz未満を対象としていない。
 本来、加害する機器装置も、駆動しなければ被害は生じない。機器装置が駆動するから低域の空気振動が発生し被害となる。低域の空気振動を駆除すれば、大半の聞こえるオトは消失する。
 風車起因の自殺に加え、風車近傍で高齢者の突然死が多発しているのだから、風車建設を推進する前に、被害を与えている風力発電機を一旦停止することを求める。
 一端停止すれば、思慮に値する稼働前後の環境変化を把握でき、周辺住民の本来の生活が復活して、被害者に笑顔が戻る。

 

以上

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