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​低周波空気振動被害に於ける医学的見解

12 October 2019

低周波空気振動被害は国家が計画的に被害者の人権を無視して生み出した、深刻な人的被害である。

国家はこの被害の専門家を、理工学士に特化し、最近では衛生工学士にまで拡大したものの医師には未だその所掌を預けようとはしない。医学的常識だけではなく人的被害問題を医師に預けるという社会的常識すら排除したまま、日本に限らず欧米諸国にも同様の被害が拡大している。

環境省をはじめとする国家やマスメディア、さらには日本消費者連盟、日本弁護士連合会などの一般社会に対して大きな影響力を持つ団体が、理工学関係者の言論の自由を採用し、低周波空気振動を利用して他者を殺傷することを容認してきた。

 

低周波空気振動に依る被害は、治癒しない。被害を生じていた環境と同じ曝露環境に入れば必ず苦しさは復元し、死ぬまで治らないのだ。無論、死に至る被害でもある。

その症状の特徴は、頭痛、耳痛、イライラに加えて、睡眠時に音源駆動が有れば不眠となる被害なのだが、被害者に共通する症状は〝痛く〟〝イライラ〟して〝苦しい〟ことだ。従って対策は〝痛い〟と〝イライラ〟を防ぐことが第一である。

 

「西名阪自動車道による騒音・低周波空気振動などの公害に悩まされている奈良県香芝町の沿道住民と,その訴えを支持する「西名阪道路公害裁判を支援する会」から国土問題研究会に委託された調査の結果をまとめた」という国土問題29号1984年7月では「特集 超低周波空気振動公害問題」として、住民の健康被害調査の報告がある。

対象者男性32人女性22人計54人の内、最も多い症状が「睡眠妨害 93%」であり続いて「イライラ 91%」「頭痛 83%」、「鼻血がでる 37%」もある。

 

一九八八年に和解した「西名阪自動車道低周波公害裁判」は、以後の高度成長に不可欠な高速道路網の建設には邪魔物扱いであったが、低周波空気振動公害という名を出さないという一点だけを守って、名を取り実を捨てて和解に同意したのだ。

 

ところが環境省や公害等調整委員会、消費者庁は被害の判定に理工学意見の結晶である〝閾値論〟を演繹して〝痛く〟て〝イライラする〟この被害を否定する。

 

参照値に代表される〝閾値論〟とは、この周波数ならこの音圧レベルでオトを聞きとれる、或は感じられるというもので、医師を排除して理工学関係者のみが実験した結果でまとめられている。逆にいえば、この音圧レベルでなければ聞こえる筈は無い、感じる筈は無いと判断されてしまうのだ。端から理工学関係者のみで作り上げられているから、骨導音要素は欠落し、しかも極短期実験の結果だ。そればかりか、背景のオトが存在しない住空間は存在しないから、現実の被害に適用してみても被害の判定には役立たず、ほぼ全ての被害は否定されてきた。

被害が認められるのは、被害かどうかも分からないせいぜい80Hz辺りで音圧レベル41dBを超える例程度だ。

しかも被害は聞こえやめまい、ふらつきが原因として生じていないから、痛くてイライラして苦しいという理由の説明はできずに、被害者は虚言者とされている。

 

即ち、低周波空気振動被害は鼓膜から内側の蝸牛や前庭の反応で生じているのではない。低周波空気振動を大型の動物は空気振動として皮膚で感じている。

 

2006年6月、東京大学の医局へ自身の低周波音に依る聴覚閾値の計測を申し出たところ、「低域の聴覚は皮膚が反応するので、正確に閾値測定が出来ないから、実施していない」とのことだった。

現実に、医学では極高域でも極低域でも空気振動をヒトは皮膚で感じるとしている。

 

山内昭雄/鮎川武二【共著】「感覚の地図帳」には「ヒトの可聴範囲と等聴力曲線」図3が示され、「可聴範囲外の狭い振動数領域の空気振動は触覚で感受される」とある。ここで20Hz未満の低域の空気振動は触覚が反応することが分かる。

「図.3」

触覚とは触れることで物体の形などを認識する能力であり、主に皮膚に存在する受容細胞によって受容され、皮膚が反応する感覚で、痛覚、温度覚などと共に、体表面に生起すると知覚される感覚のことを指す。深部感覚などとあわせて体性感覚と呼ばれることが多い。(Wikipedia)

 

ちなみに、立っていて被害がなくとも、椅子に座ればお尻から振動を感じ、座っていてなんともなくても、横になり枕に頭を置くと振動を感じて被害が生ずる。その理由は、骨導音であり頭皮(皮膚及び毛髪)が感知していることが分かる。

自身の右手を、左手の甲に向けて軽く扇ぐと左手の甲は空気の移動を感ずる。すると低周波空気振動も生じている。次図(掌送風)の通りだ。

 

ここで、現在流通している計測器のマイクロフォンは空気の移動と圧力変化を区別できないことが分かる。だから、計測は風の影響がない時にすることになる。

 

皮膚で感知した低周波空気振動は、脳の警報装置の役目を果たしていて、脅威にさらされたとき、生き残る上で役に立つ精神状態を作りだす扁桃体に伝えられて、被害者は〝急性ストレス反応〟を起こす。「急性ストレス反応」については後述する。

 

逃避、闘争、懐柔という三大生きのこり戦略を引きおこすメカニズムが、小さな組織ひとつにまとまっているのは、戦略間ですばやい切りかえを行なうためである。敵に出くわしたとき、まずは笑顔を見せて(サルならお尻を見せて)攻撃をかわそうとする。懐柔策が通用しない場合は逃げださなくてはならないが、そのときは扁桃体の働きをちょっと拡大するだけでいい。それでもだめなら扁桃体はさらに活発化して、怒りという主観的な感情とともに攻撃に転じる。

 

しかも、低周波空気振動被害は住空間で発生する。極めて稀に労働空間でも生じることがあるが、秘書や研究者だけであり、立位労働での被害例は一例も無い。より高い音圧レベル環境にあり、低周波空気振動加害源として疑う余地のないクレーンやバックホウ等の重機のオペレーターが被害を訴えず、より音圧レベルが低い周辺の住民が被害を訴える現実には、自律神経の働きを無視することはできないし、日本科学者会議に於ける理工学関係者や衛生工学士に依る自律神経に関する記述がない低周波空気振動被害論評は与太話であると断定できる。

 

つまり労働環境(交感神経優位)に於いては、いわゆる〝苦しい〟という低周波空気振動被害が発生することはなく、自宅で読書や思索に耽っている時、静養している時や就寝時(副交感神経優位)に発生する。

その自律神経とは血管、リンパ腺、内臓など自分の意思とは無関係に働く組織に分布する神経系のことであり、呼吸や代謝、消化、循環など自分の意思とは無関係で生命活動の維持やその調節を行い、絶えず活動している神経である。ヒトには自分の意志で思うようにならない大事な仕組み=恒常性(ホメオスタシス)維持があって、これを司っているのが自律神経だ。

 

自律神経は、すべての内臓、全身の血管や分泌腺を支配しており、知覚・運動神経と違って、ヒトの意思とは関係なく独立して働いているので、内臓や血管を私たちの意思で自由に動かす事は出来ない仕組だ。反対に、意識しなくても呼吸をしたり、食べたものを消化するため胃を動かしたり、体温を維持するため汗をかいたりするのも、自律神経が活動しているからだ。

副交感神経優位の状態にあるヒトが低周波空気振動を皮膚で感知すると、ボクサーやレスラーが四角いリングに上がった状態=戦闘モードに入ることになり、交感神経優位に置かれて、急性ストレス反応(傷害)の症状を発現する。

自然界にある低周波空気振動は、津波や地震、雪崩や火砕流等の天変地異を、ヒトを含めた大型動物に告知する重要な役目を持っている。その場所(空間)に居ると危険だから、とっととその場から逃げて、危険空間から離れなさいと教えてくれる。そして自然の低周波空気振動は、この告知をすれば、極短時間に消失しその役目を終える。

ところが人為的空気振動は短時間には消滅せずに延々と続き、長期長時間に渡って被害を与えるので、我が家を捨てるか、命を捨てるかという究極の選択を迫られる過酷な生理被害となるのだ。

脳は、拍動を最大限亢進し限られた血液を筋肉に送り続け、全身の筋肉を有効に活動させて、その空間を離脱せよと命じるものの、継続する低周波空気振動に依って、被害空間を出られない被害者は苦しむことになる。

 

発生する低周波空気振動も自然由来と人為的空気振動には天地の差がある。

卓越とは、周波数分析(音圧レベルを周波数の順に配置)において、両側の中心周波数の音圧レベルに対して3dB以上の高値であることであり、人為的とはその状態が継続していることである。

​図.A

図.B

 

 

「図.A」は、3.11大震災の当夜の余震を捉えた空気振動スペクトルを、時系列でカラー表示した例である。発生時刻 3月11日 22時17分 、震源地は茨城県沖、北緯36.5度、東経141.8度、マグニチュード5.7、計測地は東京での震度2程度の地震である。

 

50Hz及び40Hzが家庭用空調機に起因する低周波空気振動=人工音であり、対して6.3Hz以下の周波数での音圧レベルの高まりは、地震の揺れが起こした自然音で、低域であるほど発生している時間が長く継続している。「図.B」は、「図.A」の3次元表示であり、周波数も音圧レベルも一定で継続する人工音に対して、自然音にはそのような特徴がない。「図.C」は5分間の空気振動を折れ線グラフで表示しており、50Hzの尖鋭なPeakを示す人工音に対して、低域に示される地震の空気振動はPeakを形成しないまま、3.15Hzを中心に低域全体が高値となった後、より低域を高値に保ちながら終息している。

図.C

急性ストレス反応は、1929年にウォルター・B・キャノンによって初めて提唱された動物の恐怖への反応である「闘争・逃走反応」(fight-or-flight response)は、闘争か逃走か反応、戦うか逃げるか反応ともいい、戦うか逃げるかすくむか反応、過剰反応(hyperarousal)と言うことも、『火事場の馬鹿力』と訳されることもある。

キャノンの説によると、動物は恐怖に反応して交感神経系の神経インパルスを発し、自身に戦うか逃げるかを差し迫るという。この反応は、脊椎動物あるいはその他の生物でストレス反応を引き起こす一般適応症候群の初期段階として後に知られるようになった。

 

その身体的な反応は恐怖などのストレッサーの刺激が視床下部、下垂体に伝達し副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、アドレナリンとコルチゾールが放出される。その結果次の変化が起きる。

 

心臓・肺機能強化(心拍数上昇、血圧上昇、呼吸数上昇、気管拡張など)、体の多くの部分の血管収縮、 筋肉向けの血管拡張、脂肪やグリコーゲン等の代謝エネルギー源の放出、胃などの消化機能阻害・停止、膀胱の弛緩、勃起の阻害、涙腺と唾液腺の阻害、瞳孔散大(散瞳)、聴覚喪失、周辺視野の喪失(視野狭窄)、脊髄反射の脱抑制、振戦(ふるえ)。

 

生理学的機能の変化としては、体の他の部分に回る血を抑制し、優先的に筋肉に血が供給される。筋肉に血やエネルギー等を供給するため、心拍や呼吸が早くなり、血圧が高くなる。血糖値が上昇する。脂肪の燃焼が促進される。筋肉が、より早く、より強く動けるように緊張状態になる。(Wikipedia)

 

2004年12月26日に発生し16万人以上が犠牲となった、アチェ大津波では、天変地異(津波が海岸を襲う)の低周波空気振動を感知した象や水牛の例がある。記事に依れば、カオラックでダンさんが飼育するゾウ8頭が、地震が起きた午前8時頃鳴き声を上げた。1時間余り後ゾウは再び興奮し、背中に観光客を乗せて近くの丘に向けて突進した。近くのラノーン県沿岸では、津波の直前、草を食べていた100頭余りの水牛が、一斉に海の方を見た後、高台に走り始めた。追いかけた村人はかすり傷ひとつなく助かった。ゾウも水牛も津波による低周波空気振動を感知したらしい後に興奮状態となっている。

 

即ち、低周波空気振動を感知した脳は、ボクサーやレスラーが四角いリングに上がった状態になり、危険な現在地を脱却する為に、心拍を亢進し血圧を上げて筋肉に酸素を送り、直ちにその場を全速力で離脱することを求める。

ところが、野生動物ならいざ知らず、現代人の住環境では、その環境から離脱することが困難だから脳は異常興奮して脳内に深刻な葛藤が起きる。すると「てんかん様」の症状を呈する急性症候性発作も発現することがある。

興奮状態に陥った被害者は、喉が渇き、食欲不振や吐き気がすることも理解できるし、四六時中、拍動の亢進状態が継続すれば、血管の脆弱部分が破れてしまうことは誰にでも分かることだ。

 

尚、「急性症候性発作」については、次の記述が参考になる。

「てんかん発作」とは、脳の神経細胞の過剰なあるいは同期性の異常活動のために生じる一過性の症状だ。神経細胞群の過度の興奮性が生じる脳の部位によって種々の症状が生じる。原因は大きく、脳が急に大きな影響を被った場合と、自律的に(慢性的に)てんかん発作をおこすようになった場合がある。前者を急性症候性発作、後者はてんかんのてんかん発作だ。(てんかん情報センター)

 

脳は、大脳・小脳・脳幹に大きく分けることができる。大脳はさらに終脳(Telencephalon)と間脳(Diencephalon)に、脳幹はさらに中脳・橋・延髄に分けられる。この区別は肉眼で見た様子に基づいたものであって、胚発生の上では小脳は脳幹から分かれるものであり、また生命維持機能に強く関わる間脳を脳幹に含める意見もある。

 

人間の脳は進化の過程を経て多層構造になったといわれる。「爬虫類脳」「哺乳類脳」「人間脳」と呼ばれる3層に分けられ、「 爬虫類脳」は魚類や爬虫類と共通の一番原始的な脳であり、脳の部位では脳幹や小脳など、脳の奥部や中枢神経に近い部分が相当するとされている。

 

加えて、爬虫類脳は生命維持の為の本脳であり、心拍、呼吸、摂食、飲水、体温調節、性行動を司る。哺乳類脳は衝動的な感情の為の脳であり、喜び、愛情、怒り、恐怖、嫌悪などの情動を司る。人間脳は論理的で未来的な思考の為の脳であって、知能、記憶、言語、創造、倫理、繊細な運動を司るとされる。

図.(b)は扁桃体の背内側部および分界条床核の電気刺激によって誘起される情動反応。A:刺激前。B:25秒間の電気刺激後、うなり声を発している。頭部を下げた姿勢、耳伏せ、瞳孔拡大、および立手がみられる、C:35秒間の電気刺激後、より進んだ情動反応であるヒッシングを発している。D:うなり声に続いてヒッシングを発している。(脳・神経の科学Ⅱ ―脳の高次機能 岩波書店 1999/11/15 編集・酒田英夫・外山敬介)

 

また、脳の基本部分である脳幹はいまもほとんど変わっておらず、その後発達した3層構造のいちばん下層を支えていて、脳幹の上に、さらにモジュールが追加されていった。視覚、嗅覚、聴覚を総合的に活用できる視床、原始的な記憶システムである偏桃体と海馬、外からの刺激により敏感に反応するための視床下部など。これらはまとめて大脳辺縁系(哺乳類の脳)と呼ばれる。情動はここで生みだされるが、意識は現れない。

 

そして、人間脳に依る意識的行動(やる気)反応は遅く、理解によって変わるのであり、哺乳類脳は無意識的行動で反応は速く、訓練によって変えられるが、爬虫類脳は本能的行動で反応は最速で変えにくいという。

 

神経の構造は大まかに次のように定義される。

神経には、身体の各部分に網の目のように張り巡らされた細かいネットワークの末梢神経と、そこから集められた情報がさらに集まっている中枢神経とがある。

【中枢神経】は脳と脊髄からなっていて、全身に指令を送る神経系統の中心的な働きをしている。脳は頭蓋骨によって、脊髄は脊柱によって守られている。

【末梢神経】は中枢神経と、からだの内外の諸器官に分布する神経とを結び、情報の伝達を行っている。末梢神経は、どのような信号を伝えるかによって体性神経系と自律神経系に分けられる。体性神経系は受容器から知覚情報を受け取ったり、運動指令を伝達したりして、外部環境と作用している神経系で、求心性神経(感覚神経)は知覚の信号を受容器から中枢神経系へ伝える。遠心性神経(運動神経)は運動の信号を中枢神経系から作動体へ伝える。

そして自律神経系は心拍、呼吸、分泌の調節など、内部環境の調整を行っている神経系であり、交感神経は、自律神経系の一つで、「闘争と逃走の神経」などとも呼ばれるように、激しい活動を行っている時に活性化する。副交感神経は、自律神経系の一部を構成する神経系であり、交感神経系と対称的な存在であって、心身を鎮静状態に導く。

症状としての言葉でいうイライラは、とても苦しい症状として自覚される。これまでも複数の医師や工学士が、〝聞こえて被害になるのではない〟としているにも拘わらず、国家をはじめとする加害者は聞こえて被害になると〝閾値理論〟で被害者を言いくるめる。

 

低周波空気振動による主な生理的被害に【鼻出血】【耳閉塞】や【口内出血】【音響外傷】がある。

1頁の香芝町の健康調査に於いても「鼻血がでる 37%」となっているにも拘らず、被害は心理的被害一辺倒で処理されてきた。

 

また、音響外傷であるスマホ難聴は、ロック難聴やウォークマン難聴同様に大音量の音楽鑑賞が原因であり、楽音のジャンルに差はなく、音楽を届ける空気振動が原因の傷害であることは、医学的常識であり一般常識でもあるが、これを低周波空気振動被害には適用されないでいる。低域の空気振動は「空気による強力な打撃」となり、繊細な器官である中耳及び内耳を毀損する。鼓膜は緩み傾き、耳痛・耳閉塞を起こして「聞こえ」が劣化し、蝸牛や半規管、球形嚢や卵形嚢に過剰な圧力が加わり、「平衡感覚」が狂って、真っ直ぐ歩けなくなり、ふら付いて時に転倒し骨折する。

ところが、低域の空気振動はより高域の空気振動に比して〝伝播力が桁違いに強力だ。1Hz(ヘルツ)の波長は340mだから、振動源から放射状に拡散する空気振動は、円周率をπ、そして体積をVとすると

1Hzの空気振動は 体積V2=4/3π(340)^3

100Hzの空気振動は 体積V1=4/3π(3.4)^3

であり、そのエネルギーたるやV2/V1=(4/3π(340)^3)/(4/3π(3.4)^3)で、39,304,000/39.304=1,000,000 となり、1Hzの空気振動は100Hzの空気振動の百万倍という桁違いの伝搬力を保有していて、低域の空気振動は音源の辺り一帯の建物全体を振動させている。

騒音を軽減するために、一般に静音設計と称して周波数を下げる手法が利用されている。例えば50Hzで稼働していたものを25Hzに下げることだ。するとその伝播力は

50Hzの空気振動は 体積V4=4/3π(6.8)^3

25Hzの空気振動は 体積V3=4/3π(13.6)^3

であり、そのエネルギーたるやV3/V4=(4/3π(13.6)^3)/(4/3π(6.8)^3)で、2,515.456/314.432=8 となり、25Hzの空気振動は50Hzの空気振動の8倍の伝搬力を有していて、周波数を半分にすると伝播力は8倍になる。

また、(財)小林理学研究所 加来治郎氏の「シリーズ「騒音に関わる苦情とその解決方法」-第2回 音響の基礎:発生と伝搬」によれば「空気には重さがあり、1m^3 (立方メートル)の空気は 1.3 ㎏とあるから、1Hzの空気振動は1.3×39,304,000=51,095,200㎏の空気を振動させる伝播力を有している。なお、100Hzの空気振動は1.3×39.304=51.0952㎏の空気を振動させる伝播力を有している。

低周波空気振動に依る桁違いの伝播力は、ヒトの繊細な器官や粘膜を打擲し続け、被害を与えてきた。

しかし理工学関係者は伝播力や、屈折、回折、干渉といった低周波音の特殊な働きを明示せず、自身がこの被害の専門家であるかの如く振る舞い、医師や被害者の意見や活動に容喙してこの被害の社会的衆知を妨害してきた。

現実には、ここで示した医学的常識や社会的常識は世界中で認められているのだ。

もう一点、〝痛い〟という反応について一般社団法人日本ペインクリニック学会は「痛みとは」(https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_bunrui.html)で定義や機序について公開している。


 痛みは誰でも経験する感覚です。痛みはつらいし、嫌な感覚であり、出来れば経験したくない感覚です。痛みは、自身の体が傷害される時に感じる感覚です。合目的に考えれば、自分の体を傷害しないように行動を自制させる感覚です。傷害により嫌な感覚(痛み)を感じるわけですから、傷害しないような行動をとるようになるのです。痛みを感じない先天性疾患として、先天性無痛無汗症があります。先天性無痛無汗症患者では、痛みを感じないためどのような行動でも、恐れを感じることなく出来ます。その結果として、下肢を中心に骨折・脱臼・骨壊死、関節破壊などが多発します。また、「他人が痛みを感じる」ということへの理解も欠如することにより、社会生活が難しくなります。このように、痛みは生きていくうえで、とても大切な感覚なのです。
 

 世界疼痛学会によると、痛み(pain)は
"An unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage" と定義されます。この前半は、組織損傷(tissue damage)に伴う不快な感覚であり、情動体験である(unpleasant sensory and emotional experience)と書かれています。ここまでの定義は、日常生活で経験する痛みですので、理解しやすいです。従って、このような痛みを持っている患者には共感できますし、医師として寄り添って「直してあげたい」という感情を抱くようになります。一方後半部分は、このよう組織損傷が無くても痛みを感じることがあることが示されています。実際の臨床では、どのような検査をしても組織損傷があるように思えないにも関わらず、強い痛みを訴える患者に出会うことは少なくありません。このような患者の痛みを共感することは難しいことです。しかしながらこのような痛みに対しても共感し、患者に寄り添う治療をしなければ、患者の痛みの治療は出来ません。この点が、痛み治療を難しくしています。さらに、痛みの認知には様々な精神・心理的要因がかかわってきます。このようなことが、痛みの治療をさらに困難なものとしています。面白いことに、鎮痛薬には強いプラセボ効果が見られます。大変よく効く鎮痛薬だと思って服用すれば、偽薬でも強い鎮痛効果が得られます。このため、新しい鎮痛薬の臨床治験では、なかなか偽薬以上の鎮痛効果を発揮することが難しいです。
 上述の定義の前半の痛みは、痛みとなる刺激が上位中枢で認知され、さらに不快な感情を持ち、情動体験(怒り、恐れ、悲しみなど、比較的急速に引き起こされた一時的で急激な感情の動きのこと)が引き起こされることにより生じます。上述の定義の後半部分の痛みは、痛みとなる刺激は無いにもかかわらず、不快感・情動体験が強く引き出されることにより生じた痛みと考えられます。この点から考えると、上位中枢での痛みの認知が痛みを考えるうえで最も重要なこととなります。ただ、この部分の詳細は十分には理解されていません。最近は、functional MRIなどを用いて人間での痛み認知のメカニズムの研究が進んできているところです。少なくとも、痛みは知覚・情動・認知に係わる上位中枢の領域で処理される過程で生まれる複雑な感覚であることは事実です。痛みは原始的な感覚であると同時に、大変高度な感覚でもあるのです。

 

・痛みの分類と機序
 痛みの分類法には、"部位による分類"、"原因による分類"、など、観点から様々な分類が知られています。

 

・部位による分類
 部位による分類では、体性痛(体表の痛み)と内臓痛に大別されます。体性痛は鋭い痛みであり、大脳の体性感覚野へ投射され、局在がはっきりしています。一方内臓痛は鈍い痛みであり、投射部位はわかっていません。局在ははっきりしません。

 

・体性痛
 体性痛は、体表への刺激により惹起される痛みです。体性痛を起こす刺激には、熱刺激・機械刺激・化学刺激があります。
 人は42℃より熱いお風呂には、熱くてなかなか入れません。これは42℃が、熱を痛みと感じる閾値となっているからです。これが熱刺激による痛みです。熱刺激のセンサーとなる受容体には、カプサイシンの受容体でもあるTRPV1があります。TRPV1は42℃で発火します。その他冷たい刺激を感じる受容体として、TRPM1、TRPA1などが知られています。
 機械刺激は、圧力による痛みです。皮膚をつねった時に痛みを感じるのは、つねることにより皮膚が圧力を感じ、それが痛みの閾値を超えると痛みとなるのです。圧力を感じる受容体は十分にはわかっていません。機械刺激の受容体としては、メルケル細胞に存在するPiezo2が報告されています。メルケル細胞は触刺激を感じる細胞です。触刺激によりPiezo2が興奮し、メルケル細胞に活動電位が起こります。この結果メルケル細胞から神経伝達物質が放出され、A求心性神経に伝達されます。A求心性神経は、痛み情報ではなく触角情報を伝達する神経線維です。このように、メルケル細胞で感じる機械刺激は触刺激であり、未だに機械刺激による痛み刺激の受容体はわかっていません。
化学刺激は、ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、H+、プロスタグランジンなどの化学物質による刺激です。各々の選択的受容体に作用し、痛みをおこします。TRPV1はH+受容体でもあります。

 

・内臓痛
 内臓痛は、内臓が感じる痛みです。肝臓・腎臓などの実質部は痛みを感じません。内臓痛を生じる刺激は体性痛とは異なり、内臓は熱刺激に反応しません。また、管腔臓器は切られても痛みを感じません。一方、腹膜の過伸展により痛みを生じます。また、平滑筋の痙攣性収縮でも痛みを感じます。このように、内臓痛は体性痛と異なる性質を有しています。

 

原因による分類
 侵害受容器を介する痛み(侵害受容性痛)と、介さない痛みに大別されます。侵害受容器とは痛みを起こす刺激(侵害刺激)の受容器です。前述の、熱刺激・機械刺激・化学刺激の受容器がこれにあたります。侵害受容性痛には、「つねった時痛み」・「熱いものに触った時の痛み」など病的な意味を持たない痛みと炎症による痛み(炎症性痛)が含まれます。侵害受容器を介さない痛みとしては、神経障害に起因する痛み(神経障害性痛)があります。
炎症痛は炎症の4徴(腫脹・発赤・痛み・熱感)の一つで、炎症反応を特徴づけている兆候です。炎症痛を合目的に考えると、「炎症反応を早く終了させるために安静を維持させるためのもの」と考えることができます。神経障害による痛みは、帯状疱疹後神経痛・幻肢痛などが代表的に疾患であり、「体性感覚神経系に影響する病変あるいは 疾病による直接的な結果としての痛み」と定義されています。神経障害性痛は体性感覚神経系の機能消失でしかなく、患者に苦痛を与えるだけです。神経障害性痛の特徴は、アロディニア(触刺激を痛みと感じる)を生じることがあることです。また、電気が走るような痛み(電撃痛)、灼熱痛など日常生活では感じることのない痛みを感じる点です。
炎症性痛は、非ステロイド性消炎鎮痛薬*などで治療できる場合が多いです。一方神経が障害されることにより脊髄・上位中枢に様々な変化が起きることは知られていますが、神経障害性痛の発症機序はいまだによくわかっていません。発症機序がはっきりしていないため、その治療は現在十分には出来ていません。


終わりに


低周波空気振動に依る人的被害は心理的なものではなく、死を伴う生理被害であることは、明白であるにも拘わらず、理工学関係者に依って未だ医学的解明はされていないとされてきた歴史だ。とりわけ日本騒音制御工学会や日本科学者会議での理工学関係者や衛生工学士の意見は社会を混乱させてきた。


一部ではあるが社会は既に化学物質過敏症の症状をお持ちの方々に対して、障害者と認めて合理的配慮をするよう求めている。
 

合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことであり、「障害者の権利に関する条約」第2条では次のように定義されている。
 

「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものである」
 

例えば職場に於いて、疲労・緊張しやすい方に対しては「疲労や緊張が大きい方のために、休憩スペースを設たり、業務時間等を調整する」とされている。
 

理工学関係者の意見を採用した者等が、現在の被害を組織的に作ってきたのだ。
その責任は問われなければならない。

 

以上

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