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 汐見文隆医師は1994年11月「低周波公害のはなし」晩声社を上梓し低周波音被害の実態を社会に訴えた。カバーには「頭痛、不眠、イライラ……。原因は「あのオト」かも知れない!」「知られざる現代社会の病――〝聞こえない騒音〟の実態」とある。

 更に、1998年4月「道路公害と低周波音」晩声社で西名阪自動車道と阪神高速神戸線の事例をもとに、不定愁訴の原因を疑い、被害の実相に迫った。カバーには「イライラの原因を究明する、騒音と低周波音の違いを分かってほしい」とあり、被害の中心は〝イライラ〟であり、イライラの根源を明らかにしなければ、被害の解消には至らないことを示されている。

 実際に、風力発電被害やエコキュート被害を含めて、低周波音被害の主たる症状は「頭痛、イライラ、睡眠時に音源駆動があれば不眠」となる。各種アンケート結果に於いても、頭痛、耳痛を中心に〝イタイ〟ことと、〝イライラ〟が主たる被害症状である。

 動物は低周波空気振動なる恐怖に反応して交感神経系の神経インパルスを発し、自身に戦うか逃げるかを差し迫る。恐怖などのストレッサーの刺激が大脳辺縁系の偏桃体に伝わり、低周波空気振動を感知した脳は、ボクサーやレスラーが四角いリングに上がった状態になって、危険な現在地を脱却する為に、心拍を亢進し血圧を上げて筋肉に酸素を送り、直ちにその場を全速力で離脱することを求める。

 しかしその空間を離脱できない現代人は、悶々として眉をひそめ、次第に精気を失って無表情になり、闘うこともできないまま、蹲ってしまう。これが被害者の半数が示す症状であり、音源に対して抗議することもできない被害者に対し、闘う姿勢が鮮明な被害者も存在する。

 低周波空気振動に依る人的被害は心理的なものではなく、死を伴う生理被害であることは、明白であるにも拘わらず、理工学関係者に依って未だ医学的解明はされていないとされてきた歴史だ。とりわけ日本騒音制御工学会や日本科学者会議での理工学関係者や衛生工学士の意見は社会を混乱させてきた。というよりも、彼等の罠に嵌り、加害音源は益々増加し被害も一層深刻になっている。

 2006年12月に特定非営利活動法人の前身である低周波音症候群被害者の会を活動した頃、同医師からの教えは、①騒音被害と低周波音被害を峻別すること、②低周波音問題には骨導音が欠落していること、③被害の判定には被害空間及び対照データが必要であること、④そのデータは数分間の平均値を使用することであった。③を言い換えれば「低周波音被害は低域の空気振動の環境変化」であり、会はこれを捉えることを主目的に活動してきた。

 しかし、本来的に低周波音調査は、①被害判定調査、②音源探査調査に分けられる。

 その為には、些か面倒な手順を踏むことが求められる。

 はじめに、化学物質過敏症及び電磁波過敏症は低周波音被害者と同様の症状(頭痛・不眠・肩凝り・めまい・イライラその他、多様な不定愁訴)を訴えることがあるので、被害症状を詳しく聴取し、被害者の区分けをするのだが、用心をしてはいても、虚言する者を排除できないのが低周波音被害問題の悲しさだ。

 そして、被害を訴えた申請人の住まいでの低周波音を調査して仮の低周波音被害者か否かの判定をする。ここで人工的継続音(必ずしも卓越ではない)を確認できれば真正の低周波音被害者ということになる。

 次いで、疑われる音源と被害者宅での関係性の調査を実施し、音源側のインフルエンス(周波数と音圧レベル)の変化が、受音側で観測されれば音源が確定されることになるが、音源視認できない集合住宅や、多種多様な機器装置が使用される工場やスーパー・マーケット、多数のエアコンや給湯器が稼働している市街地での調査は困難を極める。

 屋外では雑多なオトが溢れていて、聞こえるオトに惑わされ、複数回の調査が必要になることが多いのだが、巨大風車の場合はとても簡単である。巨大風車が発する空力音は風車のBladeの回転数(rpm)で明確だからだ。ところが、最近の巨大風車は回転数を開示しないでいる。

 このような前提での活動結果の一部が「被害判定調査」としての受音側での調査「加害周波数と音圧レベル」である。被害の判定は飽くまで受音側の低周波音記録で判定可能だが、中には音源探査を伴った記録もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 その一つに、一際低い音圧レベルでの給湯器被害(20Hz、31.2dB)がある。
 この被害者は一時的に左耳の聴力を失ってしまった。(図をクリックすれば別頁が開く)

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 一般に音や振動現象は周波数特性を持っているが、多くの周波数成分が複雑に混在している。その周波数ごとの成分の大きさ(レベル)を調べることを周波数分析という。しかも、対策は全ての周波数帯域で効果を持つことはないので、対策の目標値や評価は周波数毎に行う必要がある。
 環境省は「低周波音防止対策の考え方」において、「低周波音に関連すると思われる苦情が発生した場合、苦情発生の状況を把握するとともに低周波音を測定し、1/3オクターブバンド周波数分析(必要に応じて狭帯域周波数分析)を行い、音圧レベルの概要を知る」とし、狭帯域周波数分析「FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)解析」を示している。FFTとは、DFT (Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換) を計算機上で高速に計算する算法(アルゴリズム)のことで、ある空間、ある時間に於いて存在した振動周波数を狭帯域で表示する分析法であり、直接の証拠とはならないが、その証明を補強するのに役立つ証拠であって間接的証拠である。
 空気振動は距離(空気抵抗)や構造物によってエネルギーは減衰して、音源から被害地へと伝搬する。
 一度放たれた空気振動エネルギーは距離減衰を伴いながら放射状に拡散し、構造物によって反射、回折、共鳴、干渉などの変化を伴った結果として、受音側へ伝搬するのだから、音源側の空気振動の変動と受音側のそれとが一致することが、唯一、音源の空気振動が受音側へ伝搬したことを示すのであり、空気振動エネルギーの伝搬を示さないFFTは傍証であり幻想に過ぎない。
 昨今、弁護士や音響コンサルタントが〝音源との同時計測〟などを謳って被害者を商いの対象にして食い物にしている例が拡大している。Dataの記述のみで自律神経の働きや、伝播力、医学的見解等のコメントもなく、パターン計測と言う必須の調査(直接証明)もないままに、参照値や感覚閾値を元にしたのでは被害判定もできないから、被害者は泣くに泣けない。悪党と言うものは、一度ヒトの弱みを握ると、一生涯蛭のように吸い付いて離れないものだ。
 被害調査は、被害判定調査と音源探査調査を実施可能であることを前提に依頼すべきである。

 活動初期の風力発電の低周波音被害例を次に示す。いずれも、愛媛県伊方町でローターは20rpmだから1Hに基音が生じて2Hz、3.15Hzが卓越する。

 低周波空気振動被害者の会は医師にこの被害についての意見を求める活動をしているので、被害者の会が作成した報告書が利用できるとなったら、谷口や川澄のように工学士がこの被害の専門家などと虚言する者には、被害者の会が作成した調査報告書を他者に開示することを禁じてきた。そうしないと、何の為に活動しているのか分からなくなってしまうのだ。

 しかし、永尾俊彦氏から被害者の会が作成した谷口のグラフを使用させて欲しいとの要請があったことから、自身が被害者であることの証は会が作成した報告書しかないので、アチコチで谷口は使用していたらしいことが判明した。

 その報告書が此方だ。​ここで示すようなエネルギー差や加害成分比率は低周波音の環境変化という基本的な物理量の捉え方や、加害音圧レベルという被害の原点に立ち戻り、被害者の声を傾聴しなければ考え方そのものが発想できない。(図をクリックすれば別頁が開く)

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低周波音被害アリとの判定をするについて、汐見文隆医師は2010年4月、次の指摘をしている。


 「不安定な空気振動だから、5デシベル以下では差があるとは断定できない、少なくとも10デシベル以上、できれば20デシベル前後の差が欲しいと考える。
 もう一つの問題は周波数であり、はっきりとしたピーク(卓越周波数)が被害現場では認められる。ピークの存在が外部から異常な低調波音が侵入していることの証明だ。
 そのピークが出現する周波数についての私の経験から、これまで分かりやすい数字として10~40ヘルツとしてきたが、8~31.5ヘルツの方が正しいかもしれない。
 50ヘルツ以上の空気振動は騒音になる。私の被害現場での経験では、50ヘルツ以上は低周波音被害をマスクする側に回る。小型の家庭用電気冷蔵庫の50ヘルツの稼動音で苦痛が楽になると、深夜に布団を台所に引っ張って行って寝ていたご婦人もあった。
 8~31.5ヘルツのあたりに、10デシベル以上の差のピークが証明され、それが被害症状の有無と一致すれば、被害症状は客観的に裏付けられたことになるこれで[結果=原因]が成立だ。」
 この意見は、苦しい時、何でもない時、それぞれにマニュアル操作で計測記録したものであり、かつ被験者数も少なかった時代のものだが、エコキュートや風力発電の被害が増加し、自動操作で記録する現在ではもう少し厳密に判定可能だと考えられる。
 風車低周波音を低周波音ではなく、〝通常可聴周波数範囲の騒音の問題〟にすり替えてしまった「風力発電施設から発生する騒音等への対応について」では、「風力発電施設騒音の評価の考え方」で、「評価の目安となる値」を『「残留騒音」(一過性の特定できる騒音を除いた騒音)からの増加量が5dBに収まるように設定する』、としていて、5dB差(エネルギーは3.1倍差)の考え方を示している。
 また、消費者庁はガス給湯器が原因の低周波音について、その卓越は6dB差(エネルギーは約4倍増)との考えを示してもいる。

 消費者庁は100万件に1人だとしてそのほとんど全てが物理現象の因果関係が認められないとした電気給湯器(ヒートポンプ)が原因の低周波音被害については、その卓越を10dB差(エネルギーは10倍増)として9dB差(エネルギーは約8倍増)の因果関係を否定している。
 即ち、国家の低周波音被害防止基準も、5dB増、6dB増以内に押える、との方向が見えているのだが、現実の被害判定は被害がある時の音圧レベルが、被害が無い時の音圧レベルに対して、安定的に〝3dB増〟があれば被害を認定するのは妥当である。況や3dB増(=エネルギーは2倍増)で被害を認めない理由は無い

 

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